デンゼル・ワシントンをNetflixで検索して見つけた一作『グローリー(1989)』です。南北戦争を部隊に黒人差別を描いた作品です。
作品情報
公開:1989年
時間:2時間2分
監督
主なキャスト
- ロバート・グールド・ショー大佐(マシュー・ブロデリック)
- トリップ(デンゼル・ワシントン)
- キャボット・フォーブス少佐(ケイリー・エルウィス)
- ジョン・ローリンズ曹長(モーガン・フリーマン)
解説
アメリカ南北戦争を舞台に米史上初の黒人部隊を描いた異色の戦争映画。奴隷解放が拡がる中で黒人だけの部隊が結成されるが、そこにも人種差別という問題は根強く残っていた。
関連事項
・南北戦争・・・1861年 - 1865年に、アメリカ合衆国(北軍)とアメリカ連合国(南軍)との間で行われた戦争。南軍は奴隷制度存続を主張(農業中心の南部は奴隷が労働力の主体となっていた。)
・奴隷解放宣言・・・ アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンが、南北戦争中の1862年9月に連邦軍の戦っていた南部連合が支配する地域の奴隷たちの解放を命じた。
・南軍ワグナー要塞・・・南軍の難攻不落といわれた砦。
・黒人部隊第54マサチューセッツ志願歩兵連隊・・・米初の黒人舞台。
感想
実話を元にして作られた作品です。今では人種差別いけないこととして当たり前のなっていますが過去には奴隷制度は実在していました。その差別は社会に深く根付いていてそう簡単に廃絶されるものではないものです。未だに黒人に対しての差別に関するニュースが流れたりしています。
奴隷開放を支持する北軍の第54マサチューセッツ志願歩兵連隊。この作品を観ないとその事実は知ることはなかったと思います。当然勇士として扱われ敬まれるべき存在でありながら、なんと当初は黒人ということで兵隊としてではなく労働として扱われていたそうです。結局は奴隷のような部隊となっていたのです。
支給されるべき靴も与えられず皮が剥がれボロボロとなった足に我慢できないトリップは、新しい靴を手に入れるために夜中に宿舎を抜け出し街にでます。しかし、その事が見つかりトリップは罰として鞭で打たれることとなります。上着を脱いだその背中は今まで鞭で打たれた傷跡で酷い状態になっています。「黒人に鞭打ちを行ってはいけない」。それでもロバート大佐は鞭打ちを指示します。背中を鞭で打たれている間トリップはロバート大佐から目を離しません。
人が人に鞭打つ行為とはどういうことなのでしょう。本来あってはならないことです。
しかし、この罰は奴隷に対しての罰ではなく規則を破った兵に対しての罰なのです。
トリップが宿舎を離れた原因が靴だと知りロバート大佐は新しい靴を確保し支給します。(黒人部隊をいうことで彼らの支給される物資が横流しされていた。)
人の上に立つ人はロバート大佐のような人物でないといけないのか。素晴らしい人物です。ロバート大佐の黒人に対して誠意を持った行動で徐々に信頼関係が生まれ本当の上官となっていきます。
部隊の中でも強く自分の権利を主張していたトリップは、あらゆることにも屈せず自分の意志を守り抜いていきます。始めは白人に対する反発心だけだったものも兵士として信頼できる人間になっていきます。命とは心臓が動いていることではなく自尊心を守り続けることでもあるんだと感じました。
兵士として認められたトリップはロバート大佐に戦争について語ります。「戦争には勝ち負けもない」と。帰る場所のないトリップら黒人にとって戦争で勝ち第54部隊が解散することが負けに等しい境遇になるのです。戦争以前に黒人を取り巻く人間社会に大きな問題が潜んでいるのです。トリップは南軍ワグナー要塞の戦いでロバート大佐と共に命を落とします。悲しいことなのかもしれませんが彼にとっては最も名誉ある死だったかもしれません。
第54マサチューセッツ志願歩兵連隊はワグナー要塞を落とすことが出来なかったのですが、その活躍が波紋を呼び後に志願する黒人が多く現れ北軍の勝利に大きく貢献したのだそうです。第54マサチューセッツ志願歩兵連隊が戦った敵は奴隷開放に反対する南軍と奴隷制度がないにも拘らず黒人を差別する北軍の白人たちだったのです。
当然のことですが、現在日本では奴隷制度のような大きな差別問題はないです。しかし差別というものは、いつでもあらゆる形をして現れるものです。自尊心を持ち他人の自尊心を敬い大きくなろうとする差別心を抑え込むように常に働きかけていかないといけないものだと感じます。
なんだか差別ということをまじめに考えてしまった作品でした。スポーツ、音楽、映画と多くの黒人が活躍している今があるのは、第54マサチューセッツ志願歩兵連隊があったからなのかもしれません。観て良かったです。