シリーズ9作目で、リブートシリーズ3作目。天才エイプ(類人猿)シーザーの最期の人類との闘いを描いた作品です。
作品情報
公開:2017年
時間:2時間20分
監督
前作『猿の惑星:新世紀(ライジング)』の監督も務めています。
主なキャスト
・猿(エイプ)
シーザー(アンディ・サーキス)
バッド・エイプ(スティーヴ・ザーン)
モーリス(カリン・コノヴァル)
ロケット(テリー・ノタリー)
レイク(サラ・カニング)コーネリウス(デヴィン・ダルトン)
・人間
コロネル大佐(ウディ・ハレルソン)
ノバ(アミア・ミラー)
シリーズ作品
オリジナル5作品
『猿の惑星(1968)』
『続・猿の惑星(1970)』
『新・猿の惑星(1971)』
『猿の惑星・征服(1972)』
『最後の猿の惑星(1973)』
リメイク1作品
『PLANET OF THE APES/猿の惑星(2001)』
リブート3作品
『猿の惑星: 創世記(2011)』
『猿の惑星: 新世紀(2014)』
『猿の惑星: 聖戦記(2017)』
あらすじ
高い知能を持ったエイプ(類人猿)はシーザーのもと、森の奥深くで人間たちを避けるように暮らしていた。一方人類には、エイプ由来の知能が低下してしまう恐ろしいウィルスが蔓延し存続すら危ぶまれる状況となっていた。わずかに生き残った者たちは北に移動しこの問題を打破しようと模索していた。そんな中ウィルスの根絶を目指すコロネル大佐は、エイプの完全消滅を企てていた。
感想
さまざまな表現
3Dでは焦点をハッキリとさせるために周囲をボカす技法を多く取り入れIMAXの効果を引き出しています。エイプの鳴き声なんかもIMAXだとより効果があり良かったです。IMAX版の鑑賞は正解でした。
一番気になるのは表情豊かなエイプです。一体どうやって作り出しているのかというのはメイキングを観ればで分かります。役者さんの表情を変換していたんですね。納得です。
人間への戒め
リブートシリーズの前2作品から続くストーリー展開は、とうとう人類の終焉が訪れエイプ(類人猿)たちの理想郷が築かれます。シーザーがここまで築くのに多くの喜びや苦しみを経験し、最期は多くのエイプたちに愛されながら死を迎えます。いつの間にか人間側からエイプ側に立って観ている自分がいます。シリーズを通してですが、人間の欲望や怒り、傲慢への戒めが描かれています。子供向けとは言えませんがジャングルブックやターザンなんかに近いものを感じました。怒りから多くの争い事は起こります。そして戦争へと繋がっていきます。「猿の惑星」は、原作者ピエール・ブールが戦時中に捕虜になった経験から生まれています。その事を念頭に置いて観ると違ったものが見えてきます。
シーザーの英雄伝説
『猿の惑星: 創世記(2011)』、『猿の惑星: 新世紀(2014)』、『猿の惑星: 聖戦記(2017)』の3部作でシーザーの一生が描かれたということになります。人間を超えた知性を持ち、エイプと人間の間で苦しみながらも平和な世界を目指し、最後には人間の手の届かないエイプのユートピアを実現するというシーザー英雄伝説が完成したことになります。ですから3部作はストーリーも繋がっていますので全て観ることをお勧めします。
少女ノバ(アミア・ミラー)
大勢の猿と兵士が占める中、人間側の可愛い少女ノバがとても美しく描写されています。ウィルスの感染によって言葉も話せずエイプ側に引き取られた少女。自分の親が殺されたのに怒りは湧かなかったのか?それは知能が低下したせいなのです。シーザー達に接する表情はとても優しく感動します。
今後注目していきたい女優さんです。
意外な結末
自分の妻と息子を殺されたシーザーはコロネル大佐率いる部隊に復讐を誓います。しかし、彼らの基地に到着し目にしたものは、自分の大切な仲間たちが檻の中に監禁されている光景でした。そして自分も捕獲されてしまいます。てっきりエイプと人間の全面戦争が起こるものと思っていたのですが、肩透かしを食らった感じです。基地外からその様子を観察していたモーリスたちは何とか脱出策を練って、地下壕からの脱出に成功します。しかし次の展開は、なんと人間同士の争いになるのです。しかも最期は予想もしなかった自然災害で人間たちがいなくなってしまいます。戦いの激しさでは『猿の惑星: 新世紀』の方が大きかったように思います。
アメリカ軍の方針に反旗を翻し人類を守る為にウィルスの元であるエイプスを虐殺するコロネル大佐が善なのか悪なのか人間目線で観ると難しいところではあります。ただウィルスに犯されはしたまもののエイプたちと幸せに暮らすノバとウィルスに犯され自決したコロネル大佐を比較するとノバの方が美しく映し出されていました。
『猿の惑星』への想い
子供の頃、お正月のTV放映で『猿の惑星』を初めて観た時、何と言えない衝撃を受けました。人間が猿に支配されている映像はかなり衝撃的で、当時の私は言葉に表すことの出来ないゾクゾクして恐怖を感じたのを覚えています。
「猿なんかに支配されるんじゃない!人間の方が賢いんだ!」
という想いで夢中になって観ていました。
「私たちの未来は、猿に支配される」という内容があまりにも衝撃的で、未だにこの作品の行方が気になるのです。それほど『猿の惑星』は当時の私には強烈な印象を残した作品でした。
あれから40年以上経ち今回観た『猿の惑星・聖戦記』は当時夢中になった気持ちとは別の思いで観ることになります。猿たちの想像を超える進化への恐怖心は当然のように無く、時代とともに進化している映像技術の素晴らしさに感嘆し、猿を人間として捉え「人間の本性とは何だろう?」、「戦争とは何だろう?」と、様々な当時は考えなかった事柄を想像しながら鑑賞するようになっていました。
『猿の惑星』シリーズは、「怒り」「恨み」「差別」「蔑み」から起こる戦争というものを、猿vs人間という形式にして観る側の感情を駆り立て、より分かりやすくした戦争映画だったのです。
まとめ
猿vs人間の結末は、傲慢な人間が自ら作り出した薬品や武器で自滅してしまします。人間にとってはカタストロフィーなのですが、なぜか悲しみや恐怖が湧いてきません。シーザーとモーリスが見下ろすユートピアは私たち人間も求める世界だからなんだと思います。
『猿の惑星』からは多くのことが学べます。しかし、その学んだ事を実行する事は難しく、同じ過ちを繰り返すのが人間です。
シーザーも仲間であるコバを殺し、人間に復讐を企てます。平和を願いながらも感情によって争いを引き起こしています。まるで人間そのものです。猿も知性を持つことで争いをするようになり、知性を失った人間は争いをしない。なんだか『2001年宇宙の旅』の類人猿が武器を手にしたシーンが浮かんできます。
人類の永遠のテーマである平和と戦争について考えさせられる作品でした。
予告動画
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人間の傲慢さを描いた作品。