キネマの館(ヤカタ)

映画 いくつもの感動と出会い

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』感想 博打男と不屈の女の歴史的バトル ※ネタバレあり

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どうもスポーツものでは涙腺が弱くなってしまうのですが、今作もその一つです。男性優位主義に対して一矢を報いた話にとどまらず、自身がトランスジェンダーとして目覚めていくテニストッププレーヤー、ビリー・ジーン・キングの実話です。退屈しない素晴らしい作品でした。

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作品情報

公開:2017年

時間:2時間2分

監督

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バレリー・ファリス - 映画.com

ジョナサン・デイトン - 映画.com

ご夫婦で共に制作されるようです。

主なキャスト

『ラ・ラ・ランド』アカデミー賞主演女優賞受賞。

『オブリビオン』でトム・クルーズと共演。

「チョコレートドーナツ」ではゲイ役を演じていました。今回もゲイ役です。

 

[女性側]

ビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン )

夫:ラリー・キング(オースティン・ストウェル)

恋人で美容師:マリリン・バーネット(アンドレア・ライズボロー)

マネージャー:グラディス・ヘルドマン(サラ・シルバーマン)

衣装:テッド・ティンリング(アラン・カミング)

[男性側]

ボビー・リッグス(スティーヴ・カレル)

テニス協会責任者:ジャック・クレーマー(ビル・プルマン)

解説

主人公ビリー・ジーン・キング

主人公は、実在の女性テニスプレイヤーのビリー・ジーン・キングです。四大大会で輝かしい成績を残しています。

4大大会シングルス:12回優勝

4大大会ダブルス:16回優勝

4大大会混合ダブルス:11回優勝

彼女はテニスの成績だけでなく、女性及び同性愛者の権利向上への貢献も行っています。

参照:ビリー・ジーン・キング - Wikipedia

『Battle of the Sexes』

タイトルにもなっていますが、1973年に行われた男性vs女性の試合『Battle of the Sexes』です。今作は2試合を取り上げています。

・マーガレット・コート vs. ボビー・レッグス

・ビリー・ジーン・キング vs. ボビー・レッグス

この試合は、当時ウーマンリブ(Women's Liberation)という女性開放運動の波が全世界中で広がった時期だったことも世界中の注目を集めたそうです。

その後、 1992年にマルチナ・ナブラチロワ vs. ジミー・コナーズ戦も行われているようです。

参照:Battle of the Sexes (tennis) - Wikipedia

実際の試合の動画がありましたので貼っておきます。

youtu.be

彼女のファッションもしっかりと再現されています。

ボビー・レッグス

対戦者ボビー・レッグスは、その盛り上がりを利用して、男性vs女性のマッチメイキングして注目を集めたというところです。

実際彼は大きな借金があったようですので、当時55歳で一線を退いた彼にとってはウーマンリブは金儲けの絶好のチャンスだったのでしょう。年齢的にも体が思うように動かなくなってきているのでビリー・ジーン・キングに勝ったとしても、こういう試合を続けていればいつか負ける時は来たんでしょう。

女性解放に貢献した偉大な男性の一人として認定したいです。

映画では夫婦関係が上手くいっていなかったところまで描かれていてドラマチックな展開になってます。

あらすじ

女性トッププレーヤーのビリー・ジーン・キングは、女性プレイヤーを低い評価で扱う全米テニス協会に嫌悪感を感じていた。テニス協会トップのジャック・クレーマーが女性トーナメントの賞金を男性の8分の1に設定していることに抗議し、男性と同等に扱う事を要求する。しかし「男性は家族を養っているから」などの理由から聞き入れてもらえない。協会に絶望したビリー・ジーン・キングは、自らWTA(Women's Tennis Association)を設立し女性のみのトーナメントを開催する。ウーマンリブの盛り上がりもあり女性トーナメントは世間の注目を集めていく。そんな中、かつては世界トッププレーヤーで現在はシニアプレーヤーとして一線を退いたボビー・レッグスが、自分も一躍注目をされようとビリー・ジーン・キングに試合を持ち掛ける。 

 

感想

とても見ごたえのある作品でした。ビリー・ジーン・キングが男性優位という勢力に立ち向かう姿に感動し、何度か胸が熱くなりました。

実話を元にした作品なので映画に対しての感動の他に、ビリー・ジーン・キングという女性が実在し、今の社会に影響を与えたということにも感動します。大きな既存の勢力に立ち向かうために自身を奮い立たせ、世の女性の期待を背負い社会の流れ作ったビリー・ジーン・キングという女性に感服いたします。

そして、そういう彼女を見事に伝えているこの作品も素晴らしいです。ビリー・ジーン・キングを演じているエマ・ストーンの演技も惹かれるものがあり彼女の

作品を追ってみたくなりました。(実は、『ラ・ラ・ランド』をまだ観ていません。)

レズビアン

ビリー・ジーン・キングは、日本では「キング夫人」として知られていて、それほどテニスに関心があった訳でもない私も子供時なから覚えていました。彼女がレズビアンを公表したニュースも大きく取り上げられていたを記憶します。当時日本では、同性愛が現在のように社会に認知されておらず、TVなどの表舞台には抵抗感があった時代です。ましてや世界的に有名なプロテニスプレーヤーがレズビアンというニュースはかなりンセーショナルな事件だったと思います。今作は、女性vs男性だけでなくビリー・ジーン・キングの同性愛者としての生きていく決意のようなところもしっかり描いています。

そしてビリー・ジーン・キングが、女性美容師マリリン・バーネットに恋をする時の、エマ・ストーンのドアップシーンが秘めていた感情の騒めきを実に上手く描写しています。

あらあらというシーンです。

Emma Stone and Andrea Riseborough in Battle of the Sexes (2017)

引用:Battle of the Sexes (2017) - IMDb

その後、マリリン・バーネットはツアーの専属美容師となってビリー・ジーン・キングとの仲をますます親密なものにしていきます。

ボビー・レッグス役スティーブ・カレル

作中に当時の映像が流れる場面があるのですが、ボビー・レッグス役のコメディ俳優のスティーブ・カレルがそっくりなんです。実物の写真と比較してみて下さい。

これが実物です。

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引用:Billie Jean King - Wikipedia

こちらが映画です。

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似ていますよね。

スティーブ・カレルはコメディ俳優なのでボビー・レッグスを面白おかしく演じているのかと思っていたのですが、実際にボビーがこの戦いを盛り上げるためにユニークな事をやっていて、それを再現しているだけのようです。

まとめ

単なる女性解放運動の作品かと思っていましたが、歴史的イベントマッチ『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』を舞台にし、そこに関わる人々の人間模様をユーモアを交えて描いるたいへん楽しめる作品です。もちろんエマ・ストーン、スティーヴ・カレルの名演は観る価値あります。

また女子テニスの歴史を知る上でもいい作品です。