Netflixオリジナルでスティーブン・キング作品が登場する事は嬉しいことです。人の本能や深層心理を題材にしたモダンホラーは、誰にでも存在する内面的な悪意を描くことが多く、ビジュアル的ではない心理的な怖さを感じます。
作品情報
公開:2014年
時間:1時間42分
原作:スティーヴン・キング
監督:ピーター・アスキン
主なキャスト
殺人犯:ビーディ
妻:ダーシー(ジョアン・アレン)
夫:ボブ(アンソニー・ラパリア)
元州の司法局:ラムジー
原題は「A Good Marriage」 A Good Marriage (2014) - IMDb
解説
さてさて、ある日突然、夫が連続殺人の犯人だと知ってしまったらどうでしょう?
想像するだけでも怖くなってきます。
『ファミリー・シークレット』は、連続殺人犯とその妻の話です。
舞台は、ごく普通の幸せな家庭。結婚生活25周年を迎えたボブと妻ダーシーは、誰もが羨む仲のいい夫婦。夫のボブは堅実で優秀な会計士。ちょっと女好きで、妻ダーシーには甘えん坊な性格。
結婚25周年のお祝いも終り、夫婦水入らずの日々を送っていたある日、妻ダーシーはガレージで、夫の驚愕な秘密を知ってしまう。ボブが大切にしている娘からの小箱に連続殺人の被害女性のIDが入っていた。
これまで信頼していた夫が、連続殺人犯であると知り、うろたえるダーシーだったが....
感想
ちょっと奇妙な展開です。
通常殺人犯は自分が犯人とバレた時は、その事実を知った人物が妻であっても殺すのが通常のサスペンスの流れ。しかし今作は、ボブのその秘密は早々に明され、連続殺人犯の妻として家庭と子供を守るダーシーに焦点を当てています。
夫の秘密を知ってしまった妻ダーシーは、自分に危険が及ぶ事を恐れるが、ボブはいたって冷静で自分が捕まった時の子供たちに与える影響をダーシーに話し、どうにもならない事と説得する。そして、素直に謝り、今後殺人は犯さないと約束する。
彼は、今までと全く変わらない甘えん坊として接してくるのです。
結婚25周年のプレゼント
結婚25周年のプレゼントがストーリーの大きな鍵を握っています。
ボブがダーシーに贈ったプレゼントは、彼女が魚座であることに因んでの魚のイヤリング。後に、このイヤリングは、贈り主のボブが正気でない事の証となります。
一方、ダーシーは25周年の記念品のお返しに「1955年ダブルダイ・ペニー」をプレゼントしようとします。しかし、ボブは「そういものは購入して手に入れるものでなく運命的な出会いでないとイヤだ」と断ります。
ボブにとっては、「1955年ダブルダイ・ペニー」を手にすることは、中学生の時からの夢でした。「1955年ダブルダイ・ペニー」は、いわゆる世に出回った不良なコインです。作中では、1万5千ドルで取引されています。
刻字が二重になっている
二重人格
実は、ボブは中学生時代に親しい友人と死に別れたことで二重人格者になっていたのです。そしてその名は「ビーディ」。頭文字から付いた友人の呼び名です。ボブは殺人を犯した後、その名で警察に手紙を送っていたのです。ボブの中では「ビーディー」の出現は誰にも打ち明けれない悲しい秘密だったのです。
二重人格であるボブが、「ダブルダイ・ペニー」を手にすることを望んでいるところも興味深いところです。
ボブは、自分が連続殺人犯「ビーディー」であることを知ったダーシーに、二重人格者であることを悪びれることなく平然と告白します。そして、ダーシーをターゲットにする事は無い事を伝え、今までと何ら変わりなく素直に妻の言う事を聞く良い夫でいつづけます。妻が秘密を知った事で安心しているとさえ思える様子なのです。ボブにとっては別人格のビーディーが行なった犯行ですから、他人事のようになってしまうのです。
最善の策
夫が連続殺人犯であるが二重人格者という特別な状態であることを知ったダーシーはどうするかを、愛する子供たちのことを想いながら模索します。
警察に出頭するように勧める。
子供の未来に影響が及ぶので実行出来ない。
何もせずこのまま暮らしていく。
ボブの女性に対する目つきを見ると、殺人を繰り返す可能性がある。
そして、最終的に辿り着くところは、
ボブに死んでもらう
今まで殺人など考えとこともなかったダーシーは愛する夫を事故死に見せかけて殺害することを選択します。やはり子供の存在が大きい。これでダーシーも誰にも打ち明けられない秘密を持ってしまうのです。
謎の男
結婚25周年のパーティーの時から謎の男が彼ら夫婦を監視しています。
彼はラムジーという元州司法局の男で、ボブを連続殺人の犯人と容疑をかけています。
そしてボブの葬儀の後、ダーシーに接触し、「ビーディー」は夫婦の頭文字を合わせたものだと詰め寄ります。
もしそうだとすれば、とんでもない夫婦なんですが、そうではありません。ラムジーは、ボブが二重人格者ということをまだ知りません。
告白
ラムジーは、体も悪く、そう長くはない健康状態です。彼は間もなくして入院することになります。そしてダーシーは全てを打ち明けるために彼に会いにいきます。
ダーシー:「あなたには秘密はないの?」
ラムジー:「凶悪犯を見殺しにしたことがある。」
愛する娘からのプレゼントの小箱に自分が殺害した女性のIDを入れていたこと。
その被害者のイヤリングを自分にプレゼントにしたこと。
いたって冷静な判断で夫を殺害したこと。
を打ち明けます。
ラムジーはそれを聞いて納得し、ダーシーが正しかったと囁きます。
まとめ
ダーシーの罪の深さを考えさせられます。ダーシーがボブを警察に突き出していれば、2人の子供たちの未来はあったのだろうか?生きるための自然の行いだったのかもしれない。
どこかスッキリしない結末ですが、それこそが人間社会をよりリアルに表したものだとも感じました。
この結末こそがスティーブン・キングのモダンホラーなのでしょう。
予告動画
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