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映画『42 世界を変えた男』感想 野球ファンでなくても観てもらいたい作品 ※ネタバレあり

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子供の頃から野球のTV観戦が好きでしたが、このような話があったとは知りませんでした。素晴らしい話を知ることが出来て良かったです。

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作品情報

公開:2013年

時間:2時間8分

監督

この監督は、『サブウェイ123 激突』などのいくつかの名作の脚本を務めています。

主なキャスト 

黒人プロ野球選手:ジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン)

ドジャーズのGM:ブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)

ジャッキーの妻:レイチェル・ロビンソン(ニコール・ベハーリー)

レオ・ドローチャー(クリストファー・メローニ)

ウェンデル・スミス(アンドレ・ホランド)

ピー・ウィー・リース(ルーカス・ブラック)

ラルフ・ブランカ(ハミッシュ・リンクレイタ)

ディクシー・ウォーカー(ライアン・メリマン)

カービー・ヒグビー(ブラッド・バイアー)

エディ・スタンキー(ジェシー・ルケン)

ベン・チャップマン(アラン・テュディック)

レッド・バーバー(ジョン・C・マッギンリー)

ダッチ・レナード(C・J・ニコースキー)

クレイ・ホッパー(ブレット・カレン)

ハロルド・パロット(T・R・ナイト)

解説

史上初の黒人メジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンの半生を、ブルックリン・ドジャース(現ロサンゼルス・ドジャース)のジェネラル・マネージャー、ブランチ・リッキーとの交流を軸に描いたドラマ。1947年、ブルックリン・ドジャースのGMだったリッキーは周囲の反対を押し切り、ロンビンソンとメジャー契約を結ぶ。2人はファンやマスコミ、チームメイトからも誹謗中傷を浴びせられるが、自制心を貫き通し、プレーに徹するロンビンソンの姿勢に、次第に周囲の人々の心もひとつになっていく。

42 世界を変えた男 : 作品情報 - 映画.com

感想

今は日本人選手もメジャー・リーグで活躍し、TVでも放映されることが多くなりました。日曜のTV朝日『サンデー・モーニング』では張本氏が「メジャーは上手くないから日本に帰ってきなさい!」といつも発言していますが、この作品を観てメジャーには素晴らしい精神が引き継がれているんだと感激しました。日本のスポーツ界も差別はあった筈ですがあまり公にはならなっていないです。苦い過去を乗り越えたことを称え公にしてしまうところがアメリカの良さなのかなとも感じています。

全球団の永久欠番「42」 

まず、メジャーリーグ全球団の永久欠番があるということを知りませんでした。人種差別に耐え紳士的に振舞う事で世に自分の存在をアピールし、野球界を変えていったジャッキー・ロビンソン、そして彼を支えた周囲の人たちを賞賛したい。また、彼の背番号「42」を永久欠番としたメジャーリーグも素晴らしい。日本人がメジャーリーグに憧れるのは勝敗や収益だけでなく、このような公正な精神に支えられていているという部分もあるからなのかもしれません。

ジャッキー・ロビンソン

Jackie Robinson, Brooklyn Dodgers, 1954.jpg

ジャッキー・ロビンソン - Wikipediaより

短気で差別に対して反発心が強かったようです。それくらいでないと強い批判の中、プレーは出来なかったと思います。もし今の時代でプレーしていたらどんな選手だったのかなと想いを馳せます。

プレーの映像がありましたので貼っておきます。打った後に流れるように走塁しています。

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ブルックリン・ドジャース

画像5

この映画の主人公ジャッキー・ロビンソンが所属していた球団はドジャースなのですが、当時の本拠地は現在のロサンゼルスと違いブルックリンだったようです。上の写真のキャップの「B」がブルックリンのBです。現在のロサンゼルスに本拠地が移ったのは1958年だそうです。私の映画記事でも、いくつかブルックリンを舞台にした作品を紹介していますが、ブルックリンは移民の街として描かれています。

そういえば、日本の野球選手がメジャー・リーグに進出する先駆けになった野茂選手もドジャーズでしたね。

時代背景

時は世界大戦後、国家のために戦場で戦い帰還した黒人兵たちを待ち受けていたものは、人種差別という慣習。隔離政策、ジム・クロウ法(白人以外の有色人種に対する差別的な州法の総称)で未だ南部では強い人種差別がありました。民主主義の証とせれていたプロ野球界でも「白人のスポーツ」という意識は強く、観客シートも黒人用は別に分けられていたようです。1947年にジャッキー・ロビンソンがドジャースに入団するまではプロ野球リーグは16球団400名の白人選手で行われていました。黒人選手は二グロ・リーグという黒人選手だけのリーグでプレーしなければいけない状況だったようです。

ブランチ・リッキー

そんな二グロ・リーグに目を付けたのがドジャースのゼネラル・マネージャーのブランチ・リッキー氏です。彼は大学時代に、黒人のチームメイトが差別的扱いを受けたことに対して、自分が救いの手を差し出さなかったことを後悔していました。そういう苦い経験から、黒人に行われていた隔離政策を自分が携わる野球界で、何とかしなければいけないという使命があったということです。そして1947年のプロ野球の開幕日に400人の選手の中に1人の黒人選手が誕生したのです。

このブランチ・リッキーを演じるハリソン・フォードが特殊メイクを施して、素晴らしい演技をしています。彼自身、ブランチ・リッキーのリサーチを相当行ったという事で、その熱の入り方は映像と通しても分かるくらいです。

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左が実のブランチ・リッキー、右がハリソン・フォード

 ジャッキー・ロビンソンにプロ野球界入りの話を持ち掛けた時に、行われるであろう激しい批判の中でどう対応するのか?と尋ねます。この会話が作品の背骨となって進行していきます。

ジャッキー:「やり返す勇気を持たない選手になれと?」

リッキー:「やり返さない勇気を持つ選手になりなさい」

 

観どころ 

無事メジャー・リーガーとなりチームを引っ張るまでの活躍を見せるジャッキーでしたが、案の定激しい攻撃を受けます。

ヤジ、ビンボール、ランナーの不正な踏み付け(一塁手だった)

球場外でも、試合拒否、ホテルの宿泊拒否、チームメイトからの反対、抗議文などなど

そのような逆境の中、何とか耐えきり紳士的に振舞おうとします。ジャッキーがヤジに耐え切れずベンチ裏で泣き崩れているところのリッキーが現れ、今置かれている立場を乗り切った時の未来について語ります。多くの黒人の希望であり、プロ野球選手を目指す少年達の憧れだと

要所要所での二人の会話が、特にブランチ・リッキーの言葉がとても心に響きこの作品を引き立てていきます。

人種差別について

人種差別について少し考えてみました。

アメリカは奴隷制度を敷いて国家が著しい経済成長を遂げました。奴隷制度というものは人種差別の最もたるものです。国家の発展によって労働力が必要になり大きな過ちを犯してしまった訳ですが、その過ち犯したのもの政策であり、その後それを罪とするのも政策です。人の作り上げる社会というものは都合がいいものです。

昨年のアメリカの大統領選挙を観ると未だに白人至上主義いうものが存在するのかなとも思いまいたが、100年前までは隔離政策を行っていたのですから当時の教育を受けてきた人たちにとっては罪悪感は私たちほどないのかもしれません。

まとめ

この作品は、人の価値は何を行ったかということで決定され、すべての人はその土台の上では公平に扱われないといけないという考え方をベースとしています。これからも人の差別は無くならないでしょうが、差別をなくそうとする動きも無くならないでしょう。そういう中で自分がどう生きていくのかを学べるとてもいい作品でした。逆境で喘いでいる方にはとても勇気を貰えると思います。

ブランチ・リッキーは、黒人を味方にしたのではなく、黒人を敵にしなかったという見方が正しいのかもしれません。

予告動画

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