キネマの館(ヤカタ)

映画 いくつもの感動と出会い

映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』感想 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品

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4月22日公開のレオナルド・ディカプリオ主演の『レヴェナント: 蘇えりし者』を観る前に監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの作品を観ようと前回の『バベル』に引き続きDVDでマイケル・キートン主演の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を観ました。

 

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(C)2014 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

 

 観終わった後の感想は、いろいろな要素が盛り込まれていて中々難解でした。

 

あらすじ

マイケル・キートン演じるリーガンは、かつてのスパースター「バードマン」を演じた元ムービースター。世間が彼にバードマンを求めていることを重々承知しながら自分のやりたいブロードウェイ舞台に挑戦する。経験がない事もあり舞台を成功させる自信もない中で舞台初日を迎える。

舞台初日が近づく中、 彼の望まないアクシデントが次々と発生し度々フラストレーションを爆発させる。その際、超能力によって物を動かし破壊したりする。しかし、裏腹にそのアクシデントが話題を呼びチケットの売れ行きは良くなっていく。常々、彼の傍にバードマンが現れ彼に舞台なんかしないでバードマンに戻るように勧めてくる。全盛期を終えた中年男性の苦悩が描かれています。

 

いくつかの謎

映画の中では4つの謎がありました。この謎があることによって私の中では強く印象に残る映画となりました。単純で感動するタイプの映画とこういう風に難解で「何を言いたいのか?」という映画がありますが、この映画は完全に後者です。

 

・謎その1 冒頭とラストのクラゲと隕石?

映画の冒頭と終わりに、打ち上げられたクラゲと隕石のようなものとが映し出される。クラゲは彼がかつて自殺を図って海に入ったいった時に自殺を阻害したもの。

この作品は、自殺を図った時からの話なのだろうか?隕石は何を意味するのだろうか?

 

・謎その2 超能力

リーガンは超能力で気に入らない俳優を病院送りにしたり、楽屋で物をぶちまけたりします。非現実なことですが空想を映像にしただけのものなのだろうか?

 

・謎その3 病院の窓からいなくなった

舞台での自殺未遂で入院していて彼が窓から飛ぶ出していなくなった。父を探す娘の視線は空を見上げている。リーガンは飛び降りて死んだのだろうか?

 

・謎その4  字幕が黄色

何故か字幕が黄色です。もっと映画に集中して内容を理解しろと言いたいのだろうか?

 

すべて空想の世界?

舞台で起こることは滅茶苦茶ことばかりで、挙句の果てには本物の銃で自分を撃ってします。しかし、観客は大いに称賛し評論家までもが「無知がもたらす予期せぬ奇跡」と称える。現実の世界ではなく空想の世界を描いているようです。

私はこの映画自体が彼の空想の世界で、クラゲに刺された時点で死んでいてその際にイメージしたもの、あるいは、またはクラゲに刺された時から自己実現のためにイメージしたものを描いているのではないかと理解しています。

 

印象に残った美しいシーン

最後の病室のシーンで、娘の頭を抱くシーンと娘がリーガンを探して空を見上げるシーンは、美しく印象に残りました。特に娘の頭を抱くシーンで窓から入ってくる青い光が娘の表情を包むところはキレイだなと思いました。

 

ワンカットの撮影

随分と話題になっていますが映画全編ほぼワンカットで撮られているようです。カメラ回しっぱなしで舞台を移動している感じです。カットがない分話の時間の区切りが分からない感じになりますが意外と慣れてくれば問題なく見れました。ワンカットの映像がドラムのリズムに乗せて展開していきます。

 

感想

『21g』、『バベル』と比較してわかりにく映画でした。ただ、ワンカット撮影や映画・演劇を題材にしているところなどは、映画好きにはたまらない作品だったと思います。映画界や演劇界、俳優さんを皮肉ったような表現が多く、周りがよく止めなかったなと感じました。また主演のマイケル・キートンは『バッドマン』を演じており、主人公リーガンとダブるように思えたのですが気のせいでしょうか?彼は落ち目ではないので勘ぐりすぎなのかな。?

 

 映画の冒頭にレイモンド・カーヴァーの詩がテロップで表示されます。

 この人生で望みを果たせたか?

  果たせた? 

 君は何を望んだのだ? 

 「愛される者」と呼ばれ、愛されてると感じること

 

このレイモンド・カーヴァーの詩が映画のテーマであり、また映画に出てくる舞台の演目にもなっています。もっと詳しくこの映画を掘り下げたいのであればレイモンド・カーヴァーの小説「What We Talk About When We Talk About Love」を読まないといけないのでしょう。

 

 『レヴェナント: 蘇えりし者』に期待

 今週末に公開される『レヴェナント: 蘇えりし者』は、今回観た映画よりも、もっとわかりやすい内容のようなので私としては楽しみ(ホッと)にしています。

自然の景色を舞台にした内容なので映像の美しさに期待です。また、過去の作品からも分かるように演技に関しても妥協していないので俳優さんの演技も期待です。あと坂本龍一氏の音楽にも期待しています。イニャルトゥ監督は、「親子の絆」は『21g』『バベル』で「生き返り」『21g』でテーマとしているので、どのようにこのテーマを盛り込んでいるのか?また他の要因を盛り込んでいるのか?が今から楽しみです。