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映画『セブン』感想 ブラッド・ピット主演 ※ネタバレあり

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ブラッド・ピッド主演の『セブン』を観ました。後味の悪さが残る映画として有名です。ブラッド・ピッドとモーガン・フリーマンの共演は見事なものです。

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 セブン : 作品情報 - 映画.com 

作品情報

公開:1995年

時間:2時間6分

監督

eiga.com

『ゾディアック』も好きな映画の1本です。

あらすじ

後6日で定年の刑事サマセット(モーガン・フリーマン)とその交代で配属されたミルズ(ブラッド・ピッド)は、肥満男性が無理やり食べ物を食べさせられ殺されるという怪奇殺人事件に出会う。その翌日には弁護士が腹の肉を切り取られ殺害され、現場の床には「greed(強欲)」と血で書かれている。サマセットは事件が神学の「7つの大罪」に関係していることに気がつく。対照的な性格の二人は引き続き発生する残り5つの殺人事件に捜査という枠を超えて巻き込まれていく。 

作品内に登場する文学

ミルトン『失楽園』「地獄より光に至る道は長く険しい」

ジョン・ミルトン - Wikipedia

ジェフリー・チョーサー『カンタベリー物語』

カンタベリー物語 - Wikipedia

ダンテ『神曲』

ダンテ・アリギエーリ - Wikipedia

カトリック教会「7つの大罪」 

七つの大罪 - Wikipedia 

7つの大罪

gluttony(暴食 )、greed(強欲)、sloth(怠惰)、lust(肉欲)、pride(高慢)、envy(ねたみ)、wrath(憤怒)

7つの大罪の犯行経緯

作品中の犯行は月曜~日曜の7日間を描いています。

月 gluttony(暴食 )

火 greed(強欲)

木 sloth(怠惰)

土 lust(肉欲)

日 pride(高慢)、envy(ねたみ)、wrath(憤怒)

感想

この映画を見て「7つの大罪(だいざい)」のことを初めて知りました。カトリックの教えで人間の本質的な罪の源を示しているようです。私たちの生活している社会は法によって秩序が保たれていて、その法を犯すと罪が課せられます。しかし罪の根源はその行為を犯す人の心だあり、その心の起こりを罪と意識しなければいけないということを改めて考えさせられた作品です。日本では道徳教育に位置することだと思います。

項目に分けて思ったことを書いてみます。

ミズル刑事

正義感が非常に強く悪を許せない性格です。新しく配属になって引っ越したところは犯罪も多く、穏やかな家庭生活とは程遠いものでした。最後の殺人現場を行く前にサマセットに言いかけたのは「自分はいい夫ではないのではないか?」という言葉だったのではないかと思います。悪を退治すうる自分は正義であって自分の中の悪に気がついていない。過去の事件で犯人を銃殺した話を語る場面では相手の名前すら思い出さない自分に驚いています。

サマセット刑事

犯人のジョン・ドゥは社会に蔓延る「7つの大罪」を殺人によって認識させようとします。刑事サマセットはこの街(社会)に疲れ切っています。長年の刑事生活で罪の源とは何かを考え、知識を得、その源は人々の無関心であると気付いています。ある意味で犯人のジョン・ドゥと類似した絶望感を抱いています。社会の無関心が罪の根源だとわかっていながら無関心になっている自分がいます。

ジョン・ドゥ実行犯

「7つの大罪」を見つめないで、法律で定められた罰を与えるだけでは犯罪はなくならないと思っています。厳格なカトリック信者だと思います。ジョン・ドゥは自分の部屋が見つかった後、計画を変更すると告げます。これは知性あるサマセットの存在を知り真の「憤怒」を起こさせるためには変更が必要だ感じたからではないかと思います。初めは妻の首を宅配で送るところまでは考えていなかったのではないかと思います。大変頭のいい犯罪者です。彼の社会批判の考えは間違っておらずサマセットも共感しています。この映画では正義の定義をあいまいにし見つめ直させます。

ミルズの妻

現代社会は、熱心なカトリック信者には耐えきれないくらいの罪で囲まれています。ミルズの妻も「この街は耐えられない」と言っています。子供を育てることも躊躇するくらいです。そして深い知性を持つサマセットに相談をしています。ミルズには相談しても怒りを買うだけです。堕胎すら考えていたくらいです。

「七つの大罪」について

gluttony(暴食 )、greed(強欲)、sloth(怠惰)、lust(肉欲)、pride(高慢)、envy(ねたみ)、wrath(憤怒)

今私たちがの生活している社会はどうでしょうか?

暴食

TVでは毎日食べ物のことをやっています。インターネット上でも賑わっています。そんなに悪いことなのかと思う人もいるのではないでしょうか?

強欲

ビジネスの成功が最も正しいような広告も目に着きます。作品では弁護士が対象となっています。

怠惰

ニートの存在も怠惰の現れです。覚醒剤の常習犯が対象となっています。

肉欲

電車の中刷り、インターネットの広告と子供たちが目にする場所に当たり前のように存在します。

高慢

セレブたちの豪華の家、買い物、お金があれば誰もが羨む生活です。

妬み

日常どこにでも湧きあがる感情です。

憤怒

復讐、仕返しは、どこでも湧く感情です。いわゆる国際紛争も怒りと復讐から始まるものも多くあります。

 

こうやって見ると現代は人間の特性として当たり前になっている欲望のようです。これらの大罪をエネルギーとして人々の文明が進んでいるかのようにも思えます。日本は仏教なのでゆるいのかもかもしれません。仏教は罪や罰という概念がキリスト教と異なる気がします。

新たな「7つの大罪」

Wikipediaで「7つの大罪」を見てみると、新たな「7つの大罪」が記載されていました。

2008年3月、ローマ教皇庁は新たな七つの大罪を発表した。それは、遺伝子改造・人体実験・環境汚染・社会的不公正・貧困・過度な裕福さ・麻薬中毒である。遺伝子改造などは、胚性幹細胞への牽制とみられる。

七つの大罪 - Wikipedia

多くが日頃マスメディアには取り上げられている問題です。今後も進歩しそうな科学技術とますます大きくなる格差社会です。

映画自体が教訓

映画は非常にむごい終わり方をします。神はこの世にいないのかと思ってしまいます。冷静なサマセットは銃を捨ててミルズをなだめます。ミルズの怒りを認めた証です。ミルズはジョン・ドゥに6発の銃弾を撃ち込みます。ジョン・ドゥは撃ち込まれる前にそっと目を閉じます。自分の業を成し遂げたという終わりです。凶悪犯ジョン・ドゥの完全勝利の幕引きです。納得しない人も多いと思います。作品中で唯一人間ぽい存在であったミルズに観ている人は感情移入しています。妻と社会的地位を失ったミルズの喪失感を共に感じ、後味悪くエンドロールを眺めることとなります。

この作品はジョン・ドゥが世に知らしめようとした教訓を観ている者に教えようとしています。ジョン・ドゥは、「高慢」と「妬み」の塊です。登場する人物の中で最も大きな罪を犯しています。最後は彼の望み通りの怒りによる銃殺という死を迎えることになっています。もし彼が命乞いをしていれば観る側は納得したのかもしれません。サマセットの「撃てば負け」とうい言葉がなければ感じ方も違っていたかもしれません。なぜ同じ殺され方なのに感じ方が違うのでしょう?ジョン・ドゥの何に対して不快感をおぼえるのでしょうか?「撃てば負け」はサマセット妬みから出てきた言葉です。ミルズは「妬み」を超えた「憤怒」で殺害したことになります。日常誰にでも発生し見逃している大きな罪の「妬み」「憤怒」をラストの展開で観ている者にも発生させています。最後の結末を議論することは日常の罪「妬み」「憤怒」の対処法を考えることになっています。

最後に

自分には存在しないと思っている罪の心は、状況次第では突然出現し、犯行に及ぶか及ばないかは周囲の関心が効いているかいないかではないでしょうか。多くの事件は無関心さがもたらすものなのかもしれません。

「セブン」は今まで何度も見てきましたがこうやってブログに書くことでスッキリわかったような気がします。奥深い作品です。

 

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