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映画『スケアクロウ』感想 1973年カンヌ映画祭グランプリ受賞作品 ※ネタバレあり

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映画『スケアクロウ』の感想です。公開は1973年と今から43年も前の作品です。ジーン・ハックマンとアル・パチーノの共演です。 

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作品情報

公開:1973年

時間:1時間52分

監督

ジェリー・シャッツバーグ

主なキャスト

マックス・ミラン(ジーン・ハックマン)

フランシス・ライオネル・“ライオン”・デルブッキ(アル・パチーノ)

1973年カンヌ映画祭グランプリ受賞

ジーン・ハックマンが43歳、アル・パチーノが33歳の時の作品です。

あらすじ

ヒッチハイクの道端で知り合った性格が全く逆の2人の男の物語。マックスは6年の懲役を終えて刑務所から出てきたばかりの喧嘩早い男。一方ライオンは5年の船員生活を終え置き去りにした家族に会いに途中で人を笑わせることが生きがいのような男。全く正反対の2人がお互いの欠点を埋め合わせ必要としあい本当の友情が生まれていく。

 

感想

「Scarecrow(スケアクロウ)」は、「かかしのような」という意味です。小柄なライオンは、「カラスが'かかし'を見て何もしないのは、笑っているからで怖がっているからでない。」と言って争い事を全て笑いでごまかそうします。

大柄で腕っ節の強いマックスは、直ぐに人と揉め事を起こすヤンチャ者。自分の事を「誰も信用しない。誰も愛さない。根性が腐っている人間。」と言い切っています。

ヒッチハイクで車がつかまらない時、怒りを露わにするマックスの隣でライオンは戯けて楽しい時間を作ろうとします。どんな時でも怒りを笑いで治めようとします。

マックスも自分の欠点は自覚していて、暴行事件で刑務所に入れられた後は、ライオンの言っていた事が理解出来る様になり、自分でも人を笑わすことを覚えます。

前半は、マックスの短気という欠点が多く描かれていて、傍らにはライオンの戯ける姿が付き纏っています。いつ犯罪を犯してもおかしくないマックスは観ていてハラハラものです。

2人には、洗車サービスのビジネスを行うという夢があります。マックスの貯金で事業を起こす予定です。マックスの性格が少し穏やかになれば事業も上手く行くように思えます。ライオンのお陰で人と上手く付き合うことが出来るようになったマックスを観て、あとは2人のサクセスストーリーが始まると思っていましたが、思わぬところ落とし穴が…

常に人を楽しませようとしているライオンは、自分の気持ちを素直に表現出来ないという大きな欠点を作ってしまっていて、その内に秘めた欠点は周囲が気づくことないやっかいなものだったのです。

ライオンは、妻のアニーとの間に子供が出来、出産前に家庭を捨てて出て行っていたのです。5年ぶりにアニーとまだ見ぬ自分の子供に会うために電話を入れたところ、なんとアニーは結婚していて、生まれた男の子はいたのですが、「妊娠8ヶ月の時に転んで流産した」と嘘をつかれます。

仕送りはしていましたがアニーにとっては辛い日々を過ごさないといけないこととなり再婚をしてしまっていたのです。

 

ライオンは、電話を終えた後ショックを隠し、男の子だったとマックスと喜び合います。どこまでも道化をしてしまうのです。ライオンにとっては生まれてきたいる子供が全ての人生だったのでそのショックは計りしれないものです。ライオンは、それが原因で統合失調症という精神的な病になってしまします。声を掛けても反応しない状態になってしまったのです。電話を切った後、マックスに本当の事を言って自分の悲しい気持ちを理解して貰えば少しは楽になったかもしれないのです。

マックスの友情は厚く、洗車サービスの為の資金はライオンの治療の為に使うと決めるのです。乱暴だけれども男気あるマックスで締めくくられます。

個性的で2人の極端な性格が交互に物語を綴っていくような作品です。ショックで崩れ落ちていくライオンをアル・パチーノが上手く演じています。

最後がとても悲しい男の深い友情を描いた作品でした。