時空を超えて雑貨店のシャッター超しにやり取りされる悩み相談。原作東野圭吾の感動のファンタージー作品です。
作品情報
公開:2017年
時間:2時間9分
監督
登場人物
・謎の女性
皆月暁子(内海璃子)
浪矢雄治の元恋人。
・浪矢親子
浪矢雄治(西田敏行)
ナミヤ雑貨店の店主。悩み事の相談を受けている。
浪矢貴之(萩原聖人)
浪矢雄治の息子。
・不良3人組
矢口敦也(山田涼介)
「丸光園」の卒園生。3人のリーダー的存在。
小林翔太(村上虹郎)
「丸光園」の卒園生。
麻生幸平(寛一郎)
「丸光園」の卒園生。
・ ナミヤ雑貨店の悩み相談者
松岡克郎(林遣都)
ナミヤ雑貨店に悩みを相談したミュージシャン。
田村晴美(尾野真千子)
ナミヤ雑貨店に悩みを相談したOL。
・丸光園生
セリ(鈴木莉央、門脇麦)
「丸光園」の卒園生。
感想
とてもいい作品です。ただ複数の時間軸があるせいで複雑なストーリー展開になっています。しっかりと観ていないと理解不足で感動を逃してしまいます。私は皆月暁子の謂われのところが薄っすらとしてしまい「?」出現で感動が薄くなってしまいました。それで、鑑賞後は小説を買って分からなかった部分の穴埋めをしました。映画では描ききれていない箇所も多くあったので結果的には良かったです。映画だけでは理解しにくいところはあるのでエンドロールで感動の涙とまではいかなかったです。感動出来る筈がそこまで盛り上がってこないというのはチョット歯がゆい感じです。
原作が東野圭吾とあって次々に起こる謎の現象と登場人物にどんどん引き込まれていきます。逃亡する若者3人が望んでもいない形で他人の悩み相談を受けることとなり、その相談相手が彼らとは偶然ではない強い繋がりがあるというスリリングな結末が待ち受けています。
そして何んといってもテーマソングの「REBORN(再生)」が心に沁みるいい曲です。ハーモニカの「REBORN」、歌詞のない「REBORN」、セリの「REBORN」、山下達郎の「REBORN」と、ナミヤ雑貨店で起こる奇跡の力と共にどんどんパワーアップしていきます。エンディングの山下達郎の歌声は感動ものです。(因みに、小説では「再生」というタイトルのみになっています。)
キャストについては、優しく穏やかな西田敏行はホッするものがありました。私にとっては子供の頃の「池中玄太」からずっーと観てきた俳優さんなので、安心して観ていられます。子供と触れ合うのシーンもあったのでハマり役ですね。
20代の有望な若手の役者さんがたくさん出演しているのでそれを観るのも1つ楽しみです。「REBORN(再生)」も絡んでいるせいだと思いましが林遣都の演技力と門脇麦のエキゾチックでふんわりした感じが強く印象に残りました。
ちょっと気になったのは、山田涼介演じる敦也のイライラや冷めたところがヤケに違和感を感じてしまったところです。そういう演出だったのか分かりませんが私としてはしっくりきませんでした。アイドルということもあるのか最後の走るシーンなどは少し目立たせ過ぎだろうと感じました。走りがカッコ良すぎでした。(笑)
ここからはネタバレがありなので、鑑賞前の方はご注意を!
小説との比較
先ほども書きましたが小説と比較すると映画の方は省略されている点が多くあります。小説では「オリンピック選手候補」と「夜逃げする少年」の投函があります。作品はすべての登場人物が何らかの形で繋がってくるので、その予想外の繋がりをもっと楽しみたいという方は、小説を読むことを勧めます。東野圭吾は細かいな描写が多くちょっとした事でも後々キーとなって繋がったりするので映画では表現出来ないことも多くありますので、やはり小説は読んだ方がいいというのが正直な感想です。
あとクライマックスも異なっています。小説は不良3人組が雑貨店内で事実を知ったところで終わりです。映画は敦也たちが雑貨店を飛び出し晴美のところへ行くようになっています。そこまで描くのであれば晴美が敦也たちのことをどう感じていたのか、敦也たちは晴美に何を言ったのかを最後まで描いて欲しかったです。ですからクライマックスには中途半端さを感じました。「あれ?これで終わるの?」という感じです。
ただ小説だけ読めばいいのかというとそうではなく、映画では松岡が作った「再生」という曲が聞けます。メロディを書物からイメージすることは難しいと思いますので、この曲を柱に構成している映画は鑑賞する価値はあります。
結果、小説と映画の両方の鑑賞がいいですね。
ファンタジー作品として
この作品に描かれる奇跡は現実にはありえないストーリーなのでファンタジーなのですが、もっと神秘的にファンタジーっぽさを演出して欲しかったなーと思います。冒頭の路面電車に追い越されナミヤ雑貨店に連れ戻されるシーンなんかは空間の歪みとかをもっとはっきりと派手に表現して欲しかったし、敦也たちがいるナミヤ雑貨店の空間に異変が発生していることも何か目印となるよう光でもあれば、「その奇跡の力の正体は何?」ともっと好奇心が膨らんでいたと思います。ストーリーはファンタジーなのに演出が地味だたかなと感じました。
空の上からの祈り
小説から読み取った内容も含めた記載になります。
ナミヤ雑貨店で起こる奇蹟は、浪矢雄治と駆け落ちを画策した皆月暁子の力によるものです。身分の違いから結婚を許されなかった2人は資産家だった暁子の父によって引き離されてしまいます。暁子は恵まれない子供たちの為に「丸光園」を設立し、生涯1人を貫き、生まれつき悪かった心臓の病で他界します。暁子は息を引き取る前に「私は空の上からみんなの幸せを祈っているから」と呟いています。この空の上からの祈りのパワーが「丸光園」のみんなを守り、幸せにを導いているのです。「丸光園」で育った敦也らがナミヤ雑貨店に入ったのも偶然ではなく、丁度その日に悩み書いた便箋を投函し未来からのアドバイスを受けたのも偶然ではなかったのです。敦也たちが勘違いで田村晴美宅に押し入ったことも敦也たち3名にとっても晴美にとっても重要なことだったのです。バブルで経営者として成長した晴美は利益優先でもの事を考えるようになっていて、拘束された家の中で自分の誤った考えに気付かされるのです。
まとめ
この作品は、いくつかな仕掛けを催したファンタジー作品です。ある1人の女性の大きな愛情が「丸光園」の子供たちを包み込んでいます。見守っています。そして子供たちと卒園して大人になった人たちを幸福に導いていきます。ナミヤ雑貨店で起こる奇跡は全て「空の上からの祈り」なのです。(小説の第5章は「空の上から祈りを」です)
鑑賞後、登場する人物に降り注ぐその祈りを想い返すとジワジワと感動が湧いてきます。
作中に雄治の前に何度か登場する暁子に注目して観ていないと感動を逃すことになりますのでご注意を。パンフレッドには、雄治が敦也の白紙の便箋に対して書いた返事と敦也がその返事に対して書いた返事が入っています。手にしたい方はご購入を。
予告動画
サントラ
この作品はREBORN(再生)という主題歌が心に響きました。セリも山下達郎も最高です。
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松岡克郎がナミヤ雑貨店のシャッターの前で奏でました。
松岡克郎の曲にセリが歌詞を付けた唄です。
エンディングで流れた山下達郎の力強い歌声です。
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