男同士の特異で、しかし本当の友情を描いた作品です。若きニコラス・ケイジとマシュー・モディーンの名演が光ります。
作品情報
公開:1984年
時間:2時間
監督
主なキャスト
あらすじ
フィラディルフィアのハイスクールに通うアルは、かつてレスリングでチャンピョンになるアグレッシブな青年。女の子にはモテ、腕っぷしにも自信がある。そんな彼が、ある日周囲から変人扱いされている青年と出合う。どうも鳥が好きで伝書バトを育てようとしているらしい。伝書バトが商売になると聞いたアルもその青年と伝書バトの育成を行うようになる。アルはその青年バーディの奇想天外の発想と行動力に徐々に引かれいくようになり、共に楽しくエキサイティングな青春時代を送った。そんな彼らもベトナム戦争の徴兵で兵士として戦う時期が訪れる。楽しかった日々は終わり、地獄のような光景を目にするとになる。バーディは精神的に、アルは肉体的に大きなダメージを負って戦場を離れることになる。そして戦場を離れたアルに一通の連絡が入る。それは軍の診療所で入っているバーディの治療に協力して欲しいというものだった。
そこにいたバーディはいつも縮こまった姿勢になっていて、自分で食事もしない状態だった。
感想
主演は今では大スターのニコラス・ケイジとマシュー・モディーンです。彼らの若い頃の作品です。二人とも難しい役柄でありながらとても上手く演じています。特にベトナム戦争での体験で精神に異常をきたしたバーディを演じるマシュー・モディーンには感嘆です。ニコラス・ケイジの喜怒哀楽も随所に楽しめます。彼らのファンの方は必見の作品です。
この作品はベトナム戦争の帰還兵の苦しみを描いた作品です。1970、80年代では同じような作品が多く作られました。ざっと思い浮かぶ作品を挙げてみると
『タクシー・ドライバー』(1976)
『ディア・ハンター』(1978)
『ランボー』(1982)
などがあります。 ただ少し他のものと違っていて反戦や帰還兵の苦しみというものがメインになっているわけではなく、登場する二人の友情に焦点が合わせられています。どちらかというと、
『レインマン』(1989)
のような性格が真逆な二人の深い友情(結び付きと言った方がいいなかもしれない)を描いています。(「レインマン」は兄弟でしたが)
この作品の一番の見どころはやはりマシュー・モディーン演じるバーディの人物像です。とにかく自分の信じる事に突き進むタイプで、周囲の目は一切気にしないという性格です。しかも困った事に夢は「鳥になること」。もし、徴兵でベトナムに行かなければ大きな事を成し遂げていたかもしれない研究者タイプです。戦争で精神的にダメージを受けた姿も他の人とは異なっていて、怯えるひな鳥のように縮こまり直立しないで食事は餌を与えられるようにスプーンで口に入れてもらいます。この鳥のような恰好とその眼差しは素晴らしい演技です。作中バーディは2度程、宙を舞います。その宙を飛んだ時の喜び様もとても印象に残る表情です。宙を飛んでいる時のシーンはこちらも気持ちよくなります。
我が道を行くバーディは人と話す必要を感じなければ口を開きません。彼が何を感じているのか分からないのです。本当に人間とは別の生物に接しているような感じです。ただ、そういうバーディをアルは理解出来るのです。
当然、ニコラス・ケイジ演じるアルも見どころの一つです。彼は「女の子にモテたい」、「強く見せたい」思っている、ごく一般的な青年です。ただ、誰も相手にしない風変わりなバーディの不思議な魅力に引かれていきます。初めは伝書バトが商売になると思って共に行動したのですが、自分にはない真の強さがあることに気付き始めていきます。バーディが空を飛ぶ翼を開発している時にアルは体力的には自分が飛べると発言した時にバーディに「君は信じていないから飛べないよ」と言われてしまします。バーディは信じる力がアルの数倍強いのです。そういうバーディの強さに徐々に引かれていきます。もし徴兵がなければ二人は何か大きな事を成し遂げているような素晴らしい関係です。
ベトナムの戦場で、アルは顔に大怪我を負いその醜くなった顔は半分以上が包帯で覆われています。一方バーディは軍の診療所で監禁状態で治療を受けています。アルはバーディに楽しかった昔の想い出話を聞かせ、少しでも回復しないか試みます。しかし、バーディは一向に反応しません。救えるとするならばアルしかいないはずがほとんど反応しません。時折何か言いたそうな目つきをするくらいで…。
この治療が上手くいかなければバーディにとってもアルにとっても明るい未来は描けません。アルはバーディの治療で効果がなければ、また軍に戻されてしまします。
ベトナム戦争の悲劇はアメリカが勝利しなかったこともあるのですが、国内に反戦運動が広がり帰還しても兵士には行き場のない国になっていた事です。他の多くの作品で帰還兵が堕落していく姿を描いています。作中にも「英雄として迎え入れられてもおかしくないのに、この戦争は違う」というフレーズが出てきます。「国に上手く利用され、傷を負って帰ってきたら、それなりの待遇で処理される。」そういうジレンマもアルのセリフから読み取れます。
国や軍という組織に裏切られ未来を失いかけているアルにバーディとの過去の想い出は未来に繋がるものなのか?自分の呼び掛けがバーディには届かないと諦め欠け、今の自分の想いを全てバーディぶつけた時、バーディは以前と変わら口調で話し出します。一体なにがそうさせたかもわからないまま歓びに浸りますが、他の人とは話しません。
「他の人と話すことがない」。確かにそうです。
話さないと回復したという証明が出来ないのアルにとっては困ったものですが、それがバーディのいいところだということも知っています。結果的には、2人で監禁されていた部屋を飛び出し屋上へと向かうのですが、そこでは当時のままのバーディがいたのです。ちょっと呆気ない幕切れだったように思うのですがバーディらしいく最後まで期待を裏切ってくれました。
青春映画の清々しさもあり、2人の特異の人間関係もあり、ベトナム戦争や国、軍というものも考えさせられ、いくつもの楽しみがある映画でした。人生に行き詰った時などに観るとちょっと勇気を与えてくれる作品ではないでしょうか?
誰もが持っている自分の中のバーディ、さぁ羽ばたこう!