キネマの館(ヤカタ)

映画 いくつもの感動と出会い

『アメリカン・ギャングスター』感想 ベトナム戦争時代の麻薬王を描いた実話作品 ※ネタバレあり

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リドリー・スコット監督の作品、デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ共演の麻薬売人と麻薬捜査官の実話を基にした緊迫感ある作品です。

 

作品情報

公開:2007年

時間:2時間37分

監督

リドリー・スコット

主なキャスト

麻薬密売組織のボス:フランク・ルーカス(デンゼル・ワシントン)

こちらは本物のフランク・ルーカス

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フランク・ルーカス - Wikipedia

フランクの妻:エヴァ(ライマリ・ナダル)

フランクの弟:ヒューイ・ルーカス(キウェテル・イジョフォー)

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麻薬捜査官:リッチー・ロバーツ(ラッセル・クロウ)

汚職警官:トルーポ(ジョシュ・ブローリン)

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マフィアのボス:ドミニク・カッターノ(アーマンド・アサンテ)

 

感想

悪役としてもどこか筋を通して生きている役でないとデンゼル・ワシントンを起用する意味はないと思うのですが、この作品はまさにしっかりと筋を通しています。

フランク・ルーカス

デンゼル・ワシントン演じるフランクは麻薬の売人として仲介を通さずに直接買い付けて通常よりも安い金額で品質のいいものを扱って儲けることを思いつき実行します。アメリカ軍の輸送機を利用してベトナムから直接輸入していたそうですから軍の管理もずさんなものだったのでしょう。それを実現させたフランクの行動力も人並外れていたのだと思います。棺を利用して運ばせていたという話も本当のようです。

作中でのフランク・ルーカスは、警戒心が強く、実直で行動力があり、家族を大切にします。麻薬に関してはビジネスと位置づけ「ブルーマジック」といブランド名を付けて他業者との差別化を図ります。犯罪者ではありますが、クレーバーな人物だったことがわかります。 

※WIkipediaでは現アメリカ大統領のトランプ氏の様なお金持ちになりたかったとあります。フランク・ルーカス - Wikipedia お金持ちは、犯罪者からも憧れを抱かれるものなのですね。大統領になった彼にとっては迷惑なコメントだと思います。警察が信じれない過去を持っているフランクには正義の支えは何だったのかは考えさせられます。

リッチ・ロバーツ

フランクを追いかけ警察内部の不正を暴いたリッチ・ロバーツはとても正義感が強い捜査官です。一般の人からすると警察としては当たりまえの事をしているのですが、当時のニューヨークでは異色だったようです。フランクが捕まりリッチに賄賂を持ち掛けるのですが意に介す様子もなく話を受け流します。強い信念の持ち主です。

写真左がリッチ・ロバーツ氏です。

彼はアメリカのギャングスター、ニューヨークの元探偵リッチー・ロバーツに描かれている男とラッセル・クロウ。

Crowe's latest portrayal is a fair cop - Film - Entertainment - theage.com.au

写真でのご本人はとても優しそうな感じを受けます。作中にもありましたが、弁護士になり、フランクの刑期を70年から15年に短くしたというのですから素晴らしいです。ただフランクは保釈後に再び罪を犯したということですので複雑な思いだったのではないでしょうか。作中には女性関係も描かれていましたが、上記記事では限りなく自分に近いとありますから事実に近いんだと思います。。モテそうな感じはしますが...

いずれにしろ孤独の中で正義感を持つということは大変の事だと思います。

 ベトナム戦争との関係

当時のニューヨークの麻薬事情は、日本では想像できない程むごい状況にあったようです。それはベトナム戦争からの帰還兵の常用が関係していることが作中からわかります。戦地でヘロインを覚え国に帰ってもそれを求めてしまうという状況です。ベトナムで純度の高い高品質のヘロインを味わうと国内の純度の低いものでは満足出来ないとあります。戦地で極度のストレスを受けヘロイン中毒になった兵士がその後の国家に大きな被害をもたらすことになったとは、改めて戦争について考えさせられます。戦争という非日常な環境で受けた心の影響というものはその後も尾を引くという事をしっかりと記憶しておかなければいけない事です。

悪徳警官

麻薬で商売をする人間がいれば取り締まる人間もいます。当時のニューヨーク麻薬特別捜査官の2/3は賄賂を受け取っていたという事です。半数以上という事なので受け取らない者の方が変わり者扱いだったようで、作中にも表現されています。正義感というものがなければ人というのは周りに流されることが通常なんだと思ったりもします。

「取り締まったところでちょっとやそっとでジャンキー(薬物依存者)がいなくなる訳ではなく次から次へと悪の芽が生まれてくる。」そう考えると賄賂を受け取った方が自分にとって得策と判断するのでしょう。悪に染まった組織で正義をかざすことはある意味自分を危険に晒すことになります。マフィアが絡んでいますから締まるのも危険なことです。自分がそういう組織にいなくて良かったと思います。

まとめ

これまで秩序を考えずに麻薬業界を一変させたフランクにマフィアのボスは言います。 

「成功すれば敵を増やし、成功を諦めれば友人を増やす。」

こういう事は麻薬業界でなくてもどこの業界でも同じ気がします。バランスを保つ事は大切なんだと感じました。

悪徳警官の映画を数本観てきましたが、その一歩踏み込んだ深い闇を知ることが出来ました。デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ共演も素晴らしかったです。2時間30分を超える作品でしたが最後まで楽しめました。

 

予告動画

youtu.be