キネマの館(ヤカタ)

映画 いくつもの感動と出会い

映画『メッセージ』感想 哲学的なSFミステリー作品 ※ネタバレあり

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 『メッセージ』を観てきました。ちょっと哲学的なSF作品で未来の映像と現代が混ざり合っていて、考えながらの鑑賞でした。

ポスター画像

作品情報

公開:2016年

時間:1時間56分

監督

『複製された男』というちょっと解りづらい作品を制作しています。

映画『複製された男』感想 真実は見抜けなかった ※ネタバレあり - キネマの館

『ブレードランナー2049』も手掛けています。楽しみです。

主なキャスト

言語学者:ルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)

数学者:イアン・ドネリー (ジェレミー・レナー)

ウェバー大佐(フォレスト・ウィテカー)

シャン上将(ツィ・マー)

感想

公開から3週間経ち少しは空いているかと思っていましたが意外と観客は多かったです。冒頭の弦楽器での音はとても印象に残りました。全編を通して音の効果をとてもうまく使っている作品だと感じました。(音楽は記事の最後に紹介しています)

中に浮かぶ物体

空中に浮かぶ物体が世界の12の箇所に出現するという事件が発生します。この物体がまた奇妙な形をしています。大自然の中に出現しているのでその映像は非常に美しいです。日本は北海道に出現しているという設定でした。作中では、「雷が少ない地域でだからではないか」という予想になっていましたが、本当のところは明かされませんでした。

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宇宙の物体が空中に浮かんでいるというのはキアヌ・リーブス主演の『地球が静止する日』と似ています。こちらは球体でしたが。

映画『地球が静止する日』感想 宇宙人版のノアの方舟 ※ネタバレあり - キネマの館

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(C)2008 TWENTIETH CENTURY FOX

『地球が静止する日』は人類を戒める内容ですが、『メッセージ』もその要素は含まれています。

物体の中は重力は方向と強さが地球と異なるという面白い設定もされています。

エイリアン

奇妙な物体に乗っているエイリアンが7本足のタコのような生き物で期待していたものとはかけ離れていました。姿形がない人智を超えたものをイメージしていましたが他の作品で見たことあるような7本足のエイリアンでした。ヘプタポッドと名付けられたこのエイリアン、コミュニケーションの取り方がとても面白く、人類を遥かにしのぐものなんです。タコの足の先が広がりそこから煙のようなものが出てきて意味をもつ書体を描くのです。

画像7

形の崩れた円のなのですが、一つの円に複数の意味が込められているのです。このような見方は良くないんかもしれませんが人類とどちらが知的なんだろうと思ってしまいました。ヘプタポッド側が知的なようにも思うのですが、歩み寄ってコミュニケーションを取っているのは人類側というちょっと不思議な構成になっていました。はるばるどこかの星から訪れたわりには受け身だなと

目的 

ルイーズに課せられた仕事はヘプタポッドから「地球に来た目的」を聞き出すこと。ヘプタポッドは「武器の提供」と返します。その情報は各国と共有されており、中国やロシアのいくつかの国は浮遊物体を攻撃する決断を下します。ルイーズは彼らと接していて、この「武器」というワードが違う意味で使われているのではないかと察します。

未来を見通す力

かつてルイーズは自身の著書の序章で言語は武器になると書いたことがあります。エイリアンが使った武器とは言語の事だったのです。「他言語を学ぶと思考も変わる」。エイリアンは人類に優れた言語を提供したのです。彼らは未来を観ることが出来ます。ルイーズは、この言語を学ぶことによって未来を見る力が備わっていきます。 

 

ミステリー性と時系列

作品の構成自体がミステリーでその分集中して見れました。主人公ルイーズが未来を観る能力を持っていて、どちらの映像が現在なのかわからなくなってしまいます。実際は現在がどちらなのかは重要ではないのかもしれません。

原作がWikipediaで紹介されていますが、これを見れば少しは理解が進むかもしれません。

あなたの人生の物語 - Wikipedia

メッセージ

ヘプタポッドはルイーズに未来を見通す力を与えます。ただ、その力はルイーズに潜在的に備わっていたものでした。その力でれルイーズは地球を救う事になります。邦題の「メッセージ」は、ヘプタポッドが人類に送ったメッセージであり、未来が人類に送ったメッセージでもあります。もし我々に未来を見通す力があればその映像に素直に従い行動すれば明るい未来が待っているということです。ヘプタポッドは3000年後の未来のために地球に現れました。未来の映像を見て行動に移したのです。ルイーズも未来の映像を見て武力攻撃を停止させました。私たちは誰しも未来を見通す力を持っていて、その映像から感じ取れるメッセージに素直に従い行動すればいいだけなのかもしれません。それが「今が未来を作る」なんだと思います。

子供が病気で亡くなる映像は、ルイーズにとって決して幸せな選択を生む映像ではありません。しかし、ルイーズはイアンと結婚するという選択をします。きっとその悲しい映像の中からも幸せを感じ取れる自分がいたのではないでしょうか。

キーワード

”non-zero-sum game”がキーワードになっています。「非ゼロ和」。

勝ち負けのない世界、所謂”win-win"の世界です。あと気になったのが、中国の上将に攻撃を止めさせるために言ったメッセージです。上将の奥さんが亡くなったるときに最期に言った言葉と一致するという事でしたが作品では最後まで明かされませんでした。

テーマ

結局は世界平和を訴える内容に感じました。未来も見通せる力とどうつながるのかはわからないのですが、言語を見直す?ことが世界が一つになるというメッセージが込められている気がします。

まとめ

不思議に満ちた作品で、いろいろ考えながら観ることになりました。しかし、この作品が訴えようといしているメッセージはとてもシンプルで今人類が抱えている問題を解決するヒントなのかななんて考えたりもしました。何千もの長い間争い続けている人類がどこから取り組まないといけないのか?それはコミニュケーションの方法だったのかもしれません。映画で登場したヘプタポッドの書体が人類を救うものなのだろうか?こうやってまとめてみても不思議が感じが残る作品でした。

じっくり考えるのが好きな方にはお勧めの作品です。 

予告動画

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音楽

サントラ

この作品は音楽も素晴らしかったです。まずはサントラです。

Arrival (Original Motion Picture Soundtrack)

Arrival (Original Motion Picture Soundtrack)

  • Jóhann Jóhannsson
  • サウンドトラック
  • ¥1600

オープニング・ミュージック『On The Nature of Daylight』

このサントラには入っていないのですが冒頭の曲がとても印象に残っています。調べてみると『On The Nature of Daylight』(マックス・リヒター・オーケストラ)という曲でした。

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On the Nature of Daylight

On the Nature of Daylight

  • マックス・リヒター
  • サウンドトラック
  • provided courtesy of iTunes

この曲を検索してみるとに『シャッター・アイランド』のラストの曲としても使用されています。こちらは『This Bitter Earth』という曲とのマッシュアップです。

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This Bitter Earth / On the Nature of Daylight

This Bitter Earth / On the Nature of Daylight

  • ダイナ・ワシントン & マックス・リヒター
  • サウンドトラック
  • provided courtesy of iTunes