前回に引き続きニコラスケイジの作品です。『8mm』と同様に怒りで鬼と化すニコラス・ケイジの作品です。
作品情報
公開:2014年
時間:1時間38分
監督
主なキャスト
・ポール一家
ポール・マグワイア(ニコラス・ケイジ)
ヴァネッサ・マグワイア(レイチェル・ニコルズ)
ケイトリン・マグワイア(オーブリー・ピープルズ)
・ポールを擁護する警官
ピーター・セント・ジョン巡査(ダニー・グローヴァー)
・かつてのポールのギャング仲間
フランシス・オコネル(ピーター・ストーメア)
ケイン(マックス・ライアン)
ダニー・ドハーティ(マイケル・マグレイディ)
・ロシアのマフィア
チェルノフ(パシャ・D・リチニコフ)
アントン(パトリス・コル)
・ケイトリンの男友達
マイク(マックス・ファウラー)
エヴァン(ジャック・ファラヒー)
あらすじ
愛する娘のために犯罪から足を洗った元ギャングのポールは、現在は家族に囲まれて幸せな毎日を送っていた。ところがある日、ロシア製の拳銃トカレフから発砲された1発の銃弾で娘が殺されてしまう。復讐を誓ったポールは、狂気の鬼となって犯人を追いつめていくが……。
感想(ネタバレです)
この展開はどう読み解けばいいのだろう?映画を観終わった最初の感想です。サスペンスという程ドキドキハラハラはない。アクションでもなく。強いて言えばバイオレンスミステリーという感じです。
復讐への怒りを描いていることは間違いないのですが、怒りをぶつける対象が現れない。本来は復讐に成功し怒りを鎮めて故人を偲ぶという流れを期待するのですが残念ながらそうではない。主人公ポールは怒りによって人生の全てを失ってしまう。
映画の大半がポールたちのの勘違いによる復讐劇に費やされ真犯人が意外な人物となっています。
しかもポールが唯一信頼を置いたケイトリンのボーイフレンドなのです。
ポールの失敗から学ぶもの
この作品単なるバイオレンスミステリーではなく何か人生の教訓が学べるように思えます。(そう思うように努めた)
事業で成功していたポールが何故失敗してしまったのか?
その前に、ポールの人間像に触れてみます。
現在は市と大規模なプロジェクトを進める程の事業で大成功しているが、それ以前はギャングといて、ケイン、ダニーという2人の友人と幾つものの悪事を働いていた。
ポールはカッとなると誰も止められないくらい凶暴になってしまい17才の時ケンカで殺人を犯している。非常に凶暴な人物だが他人からの信頼はあり、その為足を洗うこともでき、その後の事業にも成功を収めている。事件の捜査を行っている警官のピーターも信頼しアドバイスを送っている。
そういうポールのギャング時代に犯した大きな過ちは、ケイン、ダニー共に隠密でロシアのマフィアから金を強奪したこと。それは味方であるオコネルをも裏切る行為だった。その大きな隠し事が今回のポールの誤った行動の根源になる。
娘が殺されポールに浮かんだ連想は
1.トカレフ⇒ロシア系マフィア
2.ロシア系マフィア⇒恨みを買うことは一つ。現金強奪
3.現金強奪⇒誰にも知られていない。知っているのはケインとダニー
ポールは、最初にロシア系マフィアのボス、チェルノフを疑います。同時にもう一つ何故バレてしまったのかということも気にしてます。自分以外に知っているのは兄弟のように信頼してたケイン、ダニーしかいません。(人間の信頼関係というものはそれくらいのものなのか?)
ポールたちに自分の部下を次々と殺されチェルノフ(ロシア系マフィアのボス)は報復でケインを拉致し、その理由を聞き出します。チェルノフにしてみれば濡れ衣です。しかも数年前に現金強奪とそのとき兄を殺害した犯人が向こうから勝手に表れたのです。
ポールは、ケインが捕まった時に連絡が取れなかったダニーに詰め寄ります。ダニーが「チックったのか?」。そして怒りのあまり殺してしまいます。
ポールは事件を振り出しから見直します。
キーとなるのはトカレフ
ポールは強奪した金と一緒に殺害したマフィアから取り上げた拳銃を同じ箱に入れて自宅に保管していました。その拳銃がトカレフだったのです。ポールが好んで使用していた凶器は拳銃ではなくナイフだったことも、この事に気付かなかった要因の一つです。
真相はとても悲しい出来事だったのです。怒りをぶつける相手でもなかったのです。それはポールが愛娘ケイトリンの交際を認めたマイクだったのです。
トカレフによって勘違いし、トカレフにより真相が分かったのです。
何故、ポールは人生を台無しにしてしまったのか?
一つは「怒り」です。感情に任せて行動に出たからです。私たちは映画に対して感情の発散を求めています。ですから任侠映画も人気があります。感情に従って行動することはとても興味深い行動で魅力があります。しかし、現実は感情に任せて取る行動では失敗することが多いです。怒りに任せて冷静さを失い行動したことが大きな過ちだったのです。
もう一つは、過去に犯した罪に駆られる強迫観念です。冷静に考えればトカレフの話が出てきたときに自宅にある拳銃を疑ってもいいのですが、自身の中にある過去の汚点が余計な想像を作り自分を追い込んでいきます。そこには周囲に隠し続けている嘘があるからです。その嘘がある限りどれだけ社会貢献してもそれは本当の自分ではなく「ごまかしの姿」と感じてしまうのです。
ちょっと肩透かしを食らったような作品ですが、「怒り」と「嘘(隠し事)」という人生の落とし穴に注目して観ると面白い作品です。一度犯した罪からは逃れることはできない。厳しい教訓です。
当然ですが、ポールにはもうチェルノフの報復からの逃げることはできません。
ポールの若い頃を演じているのは、ニコラス・ケイジの息子ウェストン・ケイジです。あまりにも似ていないので別人だと思っていました。例え親子だからと言ってもこれだけ似ていない息子を起用するのはどうなんでしょう。
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