キネマの館(ヤカタ)

映画 いくつもの感動と出会い

映画『タクシードライバー』感想 ※ネタバレあり

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BSで『タクシードライバー』が放映されていました。主演はロバート・デ・ニーロ、若い娼婦役でジョディ・フォスターが出ています。

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作品情報

公開:1976年

時間:1時間44分

監督

主なキャスト

マーティン・スコセッシ監督もタクシーの客としてしっかりと出演しています。そして今では大スターになった名優たちの若い頃の演技が観ることが出来るのも嬉しいです。

 

トラヴィス・ビックル(ロバート・デ・ニーロ)
ベッツィー(シビル・シェパード)
アイリス(ジョディ・フォスター)
スポーツ(ハーヴェイ・カイテル)

解説

大都会ニューヨークを舞台に夜の街をただ当てもなく走り続ける元海兵隊のタクシー運転手が、腐敗しきった現代社会に対する怒りや虚しさ、逃れられない孤独感から徐々に精神を病み、ついには自分の存在を世間に知らしめるため過激な行動に走る姿を描く。

タクシードライバー (1976年の映画) - Wikipedia

 

感想

ロバート・デ・ニーロの怪演が光る作品です。デ・ニーロはこの作品の前の『ゴットファーザーPartⅡ』でアカデミー助演男優賞 受賞していますので乗っている時期だったと思います。彼の出演作品を見てみるとこの時期に出演した作品のほとんどがヒットしています。顔つきも精悍で特徴あるチョット怖いあの笑顔も観ることができます。

マーティン・スコセッシ監督は妻の浮気現場に乗り付けるタクシーの客役で出演していますが、セリフも意外と多く印象に残る形で出演しています。

 

一見単なる変質者を描いた作品のようですが、あの時代のニューヨークではトラヴィスのような想いをしていた人はいたのかもしれません。(現在でもいてもおかしくない)

この社会の未秩序さに対しての憤りは、誰しもが感じることですが、通常は黙認です。タクシードライバーという職業がまさにその象徴のようなもので第3者的立場で世の中を見て黙認する。

ラストは非常に面白い展開で、嫌われたはずの選挙ボランティアの女性ペッツィーがトラヴィスに会いに来ます。ギャングの温床となっていた違法な売春宿に単身で乗り込み一掃し、時のヒーローとなれば、初デートでポルノ映画に連れていく男も許せるようになるのか?しかし、よくある話のような気もします。社会的に賞賛されれば去って行った友も戻ってはきます。最後の最後までこの社会のイヤラシイ部分を描いています。トラヴィスとペッツィがその後付き合ったとしても長続きはしないだろうと思います。

話は、若干13才で酷な役を演じたジョディ・フォスターに変わりますが、この作品で助演女優賞を受賞しています。13才の子にこんな役をやらせるとはちょっと感心出来ないのですが、誰かが演じないと作品が出来上がらないので仕方ないのかもしれません。制作者側も鬼になって取り組んだんだと思います。

作中、トラヴィスの髪型やファッションがその時の心情で変わります。武装した時のモヒカン刈りは強烈なインパクトがあります。あんなに格好で襲撃したら殺人罪に問われてもいいくらいですが、そこは映画ということになるのでしょう。何故かヒーローとなっています。

何故トラヴィスは、社会に馴染む事が出来なかったのでしょう?そこがこの作品の大きなポイントだと思います。経済成長と民衆主義と自由という民衆が望んでいた社会が築かれてきたにも関わらず、乱れきった世の中、何か大切なものが失いかけていることを肌で感じているのに声に出せない不自然さ。その不自然なことに声を上げなければいけないと感じたから社会に馴染めなかった。彼は殺人という罪を犯しています。しかし少女を救ったとしてヒーローになり、罪の制裁を受けることなく普通に社会復帰しました。そのことが彼にとって救いになったのだと思います。

タクシードライバーとしてペッツィーを家まで送った時の余裕ある表情が印象に残ります。俳優の演技に注目が集まる作品ですが都会を舞台に現代社会の心の闇を見事に描いた作品です。

予告動画

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