映画『ザ・ウォーカー』を観ました。原題が『The Book of Eli』で、決して綱渡りものではありません。綱渡りは『ザ・ウォーク』です。
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作品情報
公開:2010年
時間:1時間58分
監督
双子の兄弟が監督です。仕事も一緒って凄いですが、周りの人は間違えたりもするんでしょうね。
主なキャスト
あらすじ
人類の戦争により出来た「空の穴」で紫外線により地上にいた人々が滅亡した。それから30年、死を逃れた人々は法も宗教も物資もない無秩序な社会で生活をしている。殺人や強奪が横行し、必要の物は物々交換が基本となっている。未だ環境が元に戻らない地上では皆サングラスを掛け紫外線から目を守っていた。
そんな中カーネギーは、戦争以前のような社会の構築を目指し自分が支配する街づくりを水と武力により強引に進めていた。しかし彼はこの不安定で無秩序な街の状態に不安を抱え、それらを解決するためには「ある本」が必要であると考えていた。その本があれば人々に安らぎを与えることが出来、秩序ある社会の中で自分の地位が確固たるものになると。カーネギーは部下を使いをその本を必死に探していたが、字も読めない部下は違う本を見つけてくるだけで無駄足ばかり踏んでいた。
そんなある日、カーネギーの前に戦闘能力が人一倍優れた男が現れる。彼は西へ歩きながら旅をしていてリックの中には毎日欠かさず読む本を大切に持っていた。その本の内容を知ったカーネギーは、それが正に自分の求めている本であることを知り男に本を渡すように迫り追跡する。
キャスト
カーネギ:ゲイリー・オールドマン
西へ旅する男(イーライ):デンゼル・ワシントン
感想
キャスティング
イーライ演じるデンゼル・ワシントンがとてもいい感じです。というのもイーライの正体がわからないまま物語は進んでいきまが、いつの間にか正義側の人という認識で観ています。それはデンゼル・ワシントンの眼差しや風格から感じ取れるものなんでしょう。この映画ではイーライが正義に目覚めるところはありません。元来のいいもの顔なんですね。
一方、カーネギー演じるゲイリー・オールドマンは悪者顔です。過去に『レオン』『フィフス・エレメンツ』で支配者側の悪を演じています。正義にひっくり返された時に表情が強く印象に残ります。
登場する小物
全編薄暗い映像で展開されます。いくつか撮影構図で工夫されている場面があり目を奪われました。映画の中で出てくる音楽や品物は現代のものなのでそこも一つの楽しみです。ファミレスなどで提供される手拭きなどもライターよりも高い価値になっていて、ちょっと予想外のシーンなども見られます。目に付いたものは
・モバイルミュージックプレイヤー
・シャンプー
・映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のテーマ曲
などで、他にも発見できそうです。
イーライ
ネタをばらしますが、イーライの持っている本とは「聖書」のことで、イーライとは
「旧約聖書の『サムエル記上』に登場するユダヤの民族的指導者(士師)、祭司」とあります。映画の原題も『 The Book of Eli』ですので「聖書」の事を描いた映画です。日本人は「聖書」に馴染みがないので『ザ・ウォーカー』としたのでしょう。
最終目的地
イーライは目的地を知らず、「聖書」が「然るべき場所」に到達すると信じ、神の啓示の元、西に進んでいます。ラストはその「然るべき場所」にたどり着くのですが、その場所もまた面白くところに設定されています。良く映画の舞台となる脱出不可能なアメリカの刑務所がある島です。
聖書
カーネギーは聖書を己の欲の為に利用しようとしています。聖書には、人を導く力があり、言葉を説けば住民は従い、文明を復活させる為には欠かせないものと。
一方、イーライはただ本を読み神に啓示に従い西に向かうだけで「然るべき」場所を求めます。イーライはその目的を阻む者は殺し、聖書の中に書かれている内容よりも本を守ることのみを考えています。 イーライは、旅の途中にカーネギーの支配下の娘と出合い、聖書に書かれていることの必要性を感じ始めます。
カーネギーは聖書の力を知っていて利用しようとしていて、イーライは聖書の力を利用しないでただ啓示に従うというところはこの作品の中の大きなミソです。
最後に
イーライが戦争前の時代を「物があふれていて何が大切なものか人々が見失っていた」時代と言います。確かに物であふれかえっています。まるで物を買う為に生きているような時代です。こういう風に未来の舞台から現代を語ることは面白い試みだと思います。後、訓えというものは人にさせる為のものではなく、自分がコツコツと行うことなんですね。孤独なイーライに光を与えていくのも女性というところも良かったです。
印象に残る作品です。