1979年に発生したイラン革命で発生したイランアメリカ大使館人質事件、通称「カナダの策謀(Canadian Caper)」を描いた作品。
(C)2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
作品情報
公開:2012年
時間:120分
監督
主なキャスト
監督・主演をベン・アフレックが行っています。ベン・アフレックと言えば『パール・ハーバー』を思い出します。
イラン革命の背景
映画の冒頭で説明があります。
1950年 民主主義者モサデクが政権を握り石油を国有化した。それをよしとしないアメリカとイギリスは、1953年アメリカ・イギリスがクーデターを画策しレザー・パーレビをシャー(国王)に据えた。パーレビはイランの西洋化や自身の贅沢(王妃はミルクの風呂、コンコルド運ばせる食事など)からイスラム教徒の怒りを買うことになる。イラン市民は「イスラム協会」指導者のホメイニ師の声明のもとパーレビとアメリカ打倒デモ・集会を各地で頻繁に開くようになっていく。
癌を病んでいたパーレビは反政府運動の高まりに抗しきれず、1979年1月にイランを出国、同年2月11日に亡命中だったホメイニ師がパリから凱旋してイスラム革命は成功した。
あらすじ
1979年11月4日、イランで反米デモがパーレビの引き渡しを要求のためアメリカ大使館に押しかけるところから始まる。大使館はデモ隊が塀を乗り越え侵入し、拘束されるまでの短い時間で職員たちは機密書類を急いでシュレッダーする。そういう中、危険を感じた6人の職員がカナダ大使邸に逃げ込む。CIA秘密工作本部作戦支援部のトニー・メンデス(ベン・アフレック)は、新政府が6人の存在に気付いていない間にカナダ大使邸から彼らを救出することを企てる。
解説
実話をもとに作成された映画です。6人をカナダ大使邸からの救出するために使用した策が、彼ら映画制作スタッフとして国外に逃亡するというものです。その映画のタイトルが『アルゴ』です。偽造パスポートや偽の映画パンフレッド、事務所を用意しトニーは現地の視察団としてイランに乗り込みます。6人を引き連れ大使館を出るまでには、映画スタッフとしての演技やカナダ人としての基礎知識の勉強を行います。もし、バレてしまえば公開処刑になってしまう苦境です。
一方、新政府側は大使館職人が6人にないことに気が付きます。空港で飛行機に乗りその飛行機が国境を越えれまでは予断を許しません。
大使館を出る前夜は成功を祈り、お酒を飲んで緊張を和らげます。この作戦を乗り切るためにいくつかの危機的状況が発生します。
・ホワイトハウスからの作戦の中止
カナダ大使館を出る前日、ホワイトハウス側から作戦の中止が発せられます。トニーはその命令を無視し強行策にでます。
・移動車がデモ群衆に巻き込まれる
カナダ大使邸を出て間もなく、移動車がデモ隊の中に群衆に巻き込まれます。興奮状態の人々が車に迫ります。
・航空券の受け取り
一旦作戦が中止されているので、航空チケットはキャンセルされていました。至急大統領の指示で航空券を発行します。
・空港での搭乗手続きの芝居
イラン空港では入国時に証明書の複写が渡され出国時に提出しないといけません。6人の入国は偽装なので空港側には証明書がありません。
・偽事務所側の電話応対不在
一旦作戦が中止になったことで待機メンバーは事務所を留守のします。そのタイミングでイラン側からの確認の連絡が入ります。
・搭乗ゲートでの軍のチェック
最後に搭乗ゲートでの軍のチェックが入ります。ここで映画という娯楽要素の効果が表れます。
いくつかの困難を乗り越え何んとか飛行機に乗り込めますが、さらに新政府がシュレッダーの紙を繋ぎ合わせて職員の顔写真を復元し、6人のうちの1人が該当することに気が付きます。当時のイランは、アメリカに対しての反感は相当強く、アメリカ国民は処刑される危険性が高かったようです。6人がその恐怖に怯える緊張したシーンが続きます。
感想
6人の脱出劇が、連続した緊迫シーンで見事に描かれています。アメリカ制作の映画ですがイランの新体制に対しての反感の意はみてとれません。あくまでも「カナダの策謀」の緊迫した状況と脱出作成の成功を伝えようとしています。この映画のような奇跡の脱出劇が実話であることに驚きます。脱出の成功の鍵になったのは映画なんですが、映画という娯楽が警戒心を解くことを計算していたとすれば本当にすごい作戦だったんだですね。
イラン領空を超えた時、キャビンアテンダントがアルコールの許可が出た時が脱出成功の歓喜に湧きます。そこが感動の1シーンでした。
映画の解説をみて政治色の強い重い映画と思っていましたが、そうではなく脱出の成功を描いたスリリングなドラマでした。
ブログを書くにあたり、イラン革命とは何かを知り中東問題の溝の深さを感じたように思いました。私たちがTVなどで知る中東の問題はこうした歴史背景から脈々と続く確執があるのかと感じました。