キネマの館(ヤカタ)

映画 いくつもの感動と出会い

映画『それでも夜は明ける』感想 ※ネタバレあり

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アメリカがまだ奴隷解放をしていなかった時代、一人の自由黒人が奴隷商人に捕らわれて、奴隷として過酷な生活を送ることになったという実話を基にした作品です。 

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作品情報

公開:2013年

時間:2時間14分

監督

主なキャスト

ソロモン・ノーサップ / プラット(キウェテル・イジョフォー)

エドウィン・エップス(マイケル・ファスベンダー)

ウィリアム・フォード( ベネディクト・カンバーバッチ)

ジョン・ティビッツ(ポール・ダノ)

セオフィラス・フリーマン(ポール・ジアマッティ)

パッツィー(ルピタ・ニョンゴ)

メアリー・エップス(サラ・ポールソン)

感想

人間とは何と残酷な生き物なのでしょう。今では決して許されない残酷な奴隷制度は嘗ては存在していました。正しい正しくないを語る前にそういう過去があったいうことからそれが人間の本質なん

じゃないかと思ったりもします。

 当時のアメリカは北部では奴隷制度反対の動きが強く自由黒人という普通に生活出来る黒人もいました。しかし南部ではまだ奴隷制度が強く根付いていて、人ではなく所有物として扱われていました。

ただそこには主要産業の労働スタイルが大きく関わっていたようです。北部では製造業が盛んで機械による自動化が進み、一方南部では畑で綿などの農産物を人の手で収穫するため奴隷制度が必要とされていました。

今作は、北部で自由黒人だったバイオリン演奏者が、ある日奴隷商人に捕り、南部に送り込まれ、奴隷として売られてしまう話です。一旦奴隷として扱われ始めると、そこから抜け出すことは難しく、まるで生き地獄のような生活送ることになります。正当な訴えでも誰の耳にも届かず、自由黒人という権利が剥奪されたかの如く全く通用しなくなります。

酒に酔っ払い目覚めたら一夜にして奴隷になっていたなんて、「もしも自分が」と考えることすら出来ません。

奴隷は悲惨です。罰で受ける鞭打ちでは背中の肉を鞭の先端がまるで野獣の爪のように掻きむしっていきます。そして血しぶきが霧吹きで吹かれた様に飛び散ります。

こんな事を当たり前のように行っていたのです。綿の収穫高が低ければ売り上げが落ちます。そして市場の競争にも負けてしまいます。教育もまともに受けていない者に対しては体罰で分からせるという方法が最も簡単なのかもしれません。しかし、その時代その立場だったら、自分はこれ程まで酷い仕打ちは出来ないとは誰もが言い切れないのではないでしょうか?

ソロモンは、北から来た流れの大工(ブラッド・ピット)に自分の事情を伝え救ってもらいます。同じような自由黒人で奴隷商人に捕まり、最後まで奴隷として生きた方もたくさんいた筈です。

作品で描かれている人達は、当時のアメリカ社会で懸命に生きている人達です。奴隷商人にしてもその稼業でメシを食っています。個人個人の発想でこのような酷い行為が行われたのではなくて、社会システムがそういう人物を作り出していると思うと今の時代でも同じことが行われても全くおかしくはありません。ブラック企業というのも同じような理由から生まれているのかもしれません。

 人が築く社会システムというのは、先に優位な立場に立った者が後から参加する者を支配するという単純な仕組みはいつの時代でも変わらないものなのでしょう。

主人に気に入られ男女の関係を持った女性奴隷の生き方も注目するポイントです。結局は鞭打ちにあってしまうのですが彼女は自力で、そこから逃れることは出来ないのです。

奴隷制度は、アメリカだけに存在したものではありません。世界の彼方此方で存在していました。今も同じような制度が芽を出そうとしているかもしれません。

映画『それでも夜は明ける』予告編 - YouTube