キネマの館(ヤカタ)

映画 いくつもの感動と出会い

映画『パリ,テキサス』感想 カンヌ映画祭グランプリ作品 ※ネタバレあり

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映画『パリ・テキサス』を観ました。30年前に観た男と女の切ない関係を描いた名作です。

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写真提供:アマナイメージズ

 作品情報

公開: 1984年

時間:2時間26分

監督:ビム・ベンダース

キャスト:ハリー・ディーン・スタントン/ナスターシャ・キンスキー/オーロール・クレマン/ハンター・カーソン/ベルンハルト・ビッキ

  • 記憶を失い彷徨う男 トラヴィス・ヘンダースン:(ハリー・ディーン・スタントン)
  • トラヴィスの弟 ウォルト・ヘンダースン(ディーン・ストックウェル)
  • ウォルトの妻 アン・ヘンダースン(オーロール・クレマン) 
  • トラヴィスの8歳の息子 ハンター・ヘンダースン(ハンター・カーソン) 
  • トラヴィスの元妻 ジェーン・ヘンダースン(ナスターシャ・キンスキー)
 

はじめに

この映画は私が高校生の時に劇場公開された映画です。美人女優のナスターシャ・キンスキーが出ているということもあり、ちょっと背伸びをして観に行った記憶があります。監督は、ビム・ヴェンダース。代表作は『ベルリン・天使の詩』で、直近では『誰のせいでもない』が公開されています。少し深い題材を扱う監督で、自分の価値観にハマれば深い分だけ大きな充実感を受ける事ができます。高校生の頃なので全てを理解する事は出来なかったのですが、とても印象に残った作品で友人との映画話でたまに口にすることもあります。

あれから30年近く経って観てみると、同じような経験を積んだわけではありませんが主人公トラヴィスの限りなく素直でそして切ない男の人生が少しは理解できるようになっていました。

あらすじ

テキサスの荒野を一人の男が水の入った大きなポリ容器を持って歩いている。スーツ姿に赤系のキャップを被り、長く伸びた髭と砂ホコリを被った全身から、数日間は歩いていたことが分かる。目に入った一軒の飲食店に入り、製氷機の氷をかじり突然倒れる。運ばれた病院では医者の質問にはまったく答えない。仕方なく所持品から見つかったウォルトと書かれた電話番号に問い合わせてみると、電話の先は弟がだった。彼の名はトラヴィス。4年前に妻と子供を置き去りにして失踪していた。息子は弟のウォルトが養子として引き取り立派に育てていた。

感想

冒頭

初めから奇妙な展開に引き込まれてしまいます。この男には一体何があったのだろう?単なる精神異常者か?とてもミステリアスです。飛行機に乗れば暴れるし、車を運転すれば全く違うところへ行ってしまう。全ての記憶を失ったトラヴィスの行動はとても奇妙なものです。弟のことも覚えていないのだろう。テキサス州パリに所有した土地の写真を持っている。何故こんな何もないところの土地を購入したのか?謎に包まれている。

息子との再会

ウォルト夫妻が育てた8歳になる息子ハンターと再開します。再開と言ってもお互いに一緒に暮らしていた時の記憶はなく、唯一残されていたハンター3歳の時の8ミリだけが彼ら親子の証です。8ミリに映る様子は愛に溢れていて、バラバラになり置き去りにされたハンターにも良い印象の景色です。ハンターはとても出来た子でトラヴィスを責めたりせず直に「パパ」と呼ぶようになります。それはトラヴィスが記憶を失っているからなのかもしれません。トラヴィスは、曖昧な記憶をたどりながらもハンターの為に何かをしようと努めます。

旅立ち

ハンターの母ジェーンはピッツバーグからウォルトに養育費を入れていました。それを手掛かりにトラヴィスはある日突然ハンターを連れて元妻ジェーンに会いに行きます。もちろんハンターの同意のもとです。ウォルト夫妻にはしてみれば愛情を注いで育てた子供が元の母のところに行くのですから気が気でありません。突然の旅立ちはトラヴィスなりに考えた行動なのかもしれませんが、一言相談でもすればと思うのですが何とも身勝手な行動です。

元妻との再会

ジェーンを見つける作戦は、毎月の振り込み銀行で待ち伏せし8ミリビデオの女性をハンターが見つけるというものです。何んとか見つけ出しジェーンの乗る車を尾行します、到着した先は、なんと風俗店。マジックミラー越しに男性と会話し、要望があれば服を脱ぐというサービスのお店。トラヴィスは、どういう事をしているのかマジックミラー越しに細かくを聞き出します。ジェーンはトラヴィスのことは気付いていません。お店以外に客と会う事があるのか?など。恐らくハンター会わせられるかどうかが気になっているのだと思います。トラヴィスは厳格に育ったため彼にとってはそういうところで働く女性は愛せないのでしょうが、ハンターにとっては母親は大切だと感じたのでしょう。一旦引き上げホテルでハンターとジェーンを再開させることを決断します。

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2度目の再会

2度目の訪問では、トラヴィスは自分たちの話を友達カップルの話としてマジックミラー越しにジェーンに聴いてもらいます。始めはお客の話として聴くジェーンですが、話が進むにつれ、それが自分たちであることに気づきます。マジックミラーの向こうにいるのはトラヴィスと知り、部屋の明かりを消して顔を見合わせて涙をこぼしながら会話します。互いに感じていた気持ち伝えあいます。

トラヴィスは、ハンターといるホテルの部屋の番号を伝えその店を後にします。

母と息子の再会

ジェーンが訪れる前の晩、トラヴィスは、自分がジェーンとハンターと共に生きていけないことを息子宛にメッセージとして録音しホテルを去ります。ジェーンはホテルに訪れジェーンと再会し、ハンターは自然にジェーンに寄り添い、母子は抱き合います。トラヴィスは、一人車で行き先のない旅を始めます。

 

トラヴィスの選択

トラヴィスは、本当に自分勝手で例えそれが家族であっても我慢が出来ない男です。ただ彼なりにジェーンを心底愛していた事は間違いありません。ただジェーンと家庭を持つことが間違いだったように思います。家庭での生活は恋愛の延長ではなく、ましてや子供が生まれるとその違いは大きくなります。

「ジェーンは家庭的になりトラヴィスは恋愛を続けたかった」

トラヴィスがハンターをジェーンの元に返したのは、未だにジェーンを愛していたからで、息子のハンターに対し父親として出来ることが再会させることだったんだと思います。。風俗店を生計を立てている女性に子供を預けるなんてとても勇気がいることで難しい決断です。その後どういう風になるのか分かりませんがハンターにとっても本当の母の元に帰れたことは全く悪いことではありません。ウォルト夫妻のところで育てられた方がいいようにも思えますが、実の母を一緒にいることの方が大切なことです。明確な答えはその後の二人の人生にかかっているのだと思いますが、ジェーンは息子のことを思い続けていたはずですから仕事も変え上手くやって行くことを信じたいです。

 

30年前に観た映画、感動するポイントが掴めず戸惑った作品でしたが、改めて観て素直に生きる男と女の究極の結末を感じられて良かったです。

 

何故テキサス州のパリに土地を所有したかって?それはトラヴィスの父と母はパリ(テキサス州)で知り合い結ばれたから。トラヴィスの生地はパリ(テキサス州)だから。

 

ビデオ

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 ミュージック 

全編を通して流れるライ・クーダ―のギターがとてもいいです。

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