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映画『オートマタ』感想 人工知能と人間の行く末を描いた問題作 ※ネタバレあり

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映画『オートマタ』を観ました。人類存続の危機的状況下で繰り広げられるロボットと人間の主従関係を描いたSFサスペンス作品です。

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(C)2013 AUTOMATA PRODCUTIONS.INC.

 作品情報

公開:2013年

時間: 1時間49分

監督

eiga.com

主なキャスト

eiga.com

ジャック・ボーガン:アントニオ・バンデラス

レイチェル・ボーガン:ビアギッテ・ヨート・スレンセン

デュプレ:メラニー・グリフィス

ウォレス:ディラン・マクダーモット

ロバート・ボールド:ロバート・フォスター

 

あらすじ

2044年、急増した太陽嵐で地表は汚染濃度の高い砂漠と化し、人口は2,100万人となり、99.7%も減少した。人類は技術的な後退を余儀なくされるという絶望的な状況に喘いでいた。そんな中ROC社は「オートマタ・ピグルムス7000型」という人型ロボットを開発した。オートマタは人類存続のための防御壁や機械雲を造り人間社会に貢献した。人類が膨大な数のオートマタを管理・維持できるよう、彼らには2つの制御機能(プロトコル)が組み込まれていた。
制御機能 1:生命体への危害の禁止
制御機能 2:自他のロボットの修正(改造)の禁止」

その制御機能は複雑なロジックで暗号化されていて、人間には絶対に変更不可能なものであった。

映画冒頭のナレーションより

ROC社の事故調査員ジャック・ボーガンは、数日後に第1子の誕生を迎えようとしていた。そんな時、警官に撃たれたオートマタがROC社に運ばれてきた。そのオートマタは自己改造をしていたというのだ。何故か制御機能 2が効いていなかった。ジャックはその原因を突き止める為、オートマタに使用されていた改造部品の番号から、ある工場を調査することとなる。するとその工場の溶接用オートマタNo206が自分に火を着けて自決するという信じられない光景を目にする。オートマタNo206はいくつかの部品を所持していて、その中には強力な原子力電池も含まれていた。絶対に変更不可能な制御機能 を違反するロボットにジャックは戸惑いを隠せない。いったい誰がそれらのオートマタを改造しているのか?追跡を進めていくうちに意外な犯人にたどり着くことになる。

登場する未来技術は以下のものがあります。

  • 空間映写のテレビ・・・空間に立体的に映る映像技術
  • 機械雲・・・雨が降らないため人工的作られた雲
  • セックス・ロボット・・・セックス用のロボット
  • 原子力電池・・・半永久的な電池
  • 量子暗号・・・高度な暗号技術
  • バイオカーネル・・・ロボットの生存機能のコアとなるプログラム 
 

感想

2足歩行のロボットが今のものと形状や運動能力が似ていて現実感を感じました。機械学習が人間の知性を超えてしまうシンギュラリティ(技術的特異点) を描いた作品で、最後はオートマタがロボットを作り出し、人類がいない新天地に向かうという見捨てられた感の残る少し寂しい結末となっています。

オートマタによって作られた昆虫型ロボットは、オートマタを遥かに凌ぐ性能で、危険を感じると人間を殺してしまいます。制御機能 1が組み込まれていないのです。怖いですね。ロボットを造ったのが人間なので自業自得なのですが、攻撃しない限り襲ってはこないので安全ではあります。倫理観が人間に近いロボットということです。

オートマタと昆虫型ロボットは最後に谷を越えた人間が踏み入ることの出来ない核汚染地帯に向かいます。そこは皮肉なことに、核と高知能ロボットという人類がアト始末出来ない最高技術の場となったのです。

 

今作品でもセックス・ロボットが登場しています。

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(C)2013 AUTOMATA PRODCUTIONS.INC.

最近のニュースでは、VR(仮想現実)でも、そういう性的な商品が多く開発されているようです。どうしても新しい技術の普及には登場するカテゴリーなんですね。ジャックもダンスまでして、いい雰囲気になったのですが、それ以上は進みませんでした。キスぐらいはするのかなと期待したのですが、さすがに子供が生まれるって時にそれはないのでしょうが、あれだけの雰囲気になるというのはしたも同然です。

作品中にジャックの海を思い浮かべる回想シーンが何度か現れます。そこに映る亀はウミガメでない淡水のカメです。きっとあれは幻想なんでしょう。海を見たこともないのに海の存在を感じる人間の直感というやつですね。これはロボットにはない能力です。ジャックと奥さんは生まれた子供を連れて海のある場所まで行きます。人間はその根拠なき直感を信じて愛する者を守ってきたことを表しているんだと解釈しました。

この作品は、他のロボット作品のような高度なロボット社会に対しての警鐘を描いるのではありません。オートマタの初期型は制御機能がないロボットで人間の叡智を越えてしまっているのですが、「A.I」や「アイロボット」のように暴走はしていません。何の危害を加えていないのに、人間側が管理出来ないという理由で勝手に危機と感じて抹消しているだけなのです。

描かれてある舞台は、「核による環境破壊」、「人工知能の特異点超え」、「太陽異変より地球環境の変化」という3つの問題を抱えています。人類存続の危機は太陽嵐という人類にはどうすることも出来ない自然の変化によってもたらされています。ロボットが危機をもたらしている訳ではありません。

もしかすると制御機能のないロボットに問題解決をしてもらった方がいいのかもしれません。

しかし、制御機能がないもの危険だとして抹消される運命にあります。人間がロボットを管理しないといけないという考えが既に人間を超えたロボットとの共存を難しくしているのです。

もしかすると谷を越えて人間と隔離される場所に移った2体のロボットが人類を救う画期的なもの開発するのかもしれません。

 

ジャックと制御機能がなくなったロボットの会話です。

2人で砂漠を歩いている時。

 ロボット:「人は何から創られるのですか?」

 ジャック:「母親からだ。ただお前らロボットには理解できない」

ロボットが、何故酸性雨が降るのか分かった時にジャックに理由を聞かれた時

 ロボット:「人間に説明しても理解できない」

このロボットが言う「人間に説明しても理解できない」という事実を人間側が受け入れないのでロボットとは共存出来ないのです。

ジャックの奥さんがジャックに対しての言葉

 「人生はなるよにしかならない。」

確かにそうですね。

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ロボット社会を舞台にしていくつか問題を織り交ぜ人間の本質的な欠点に迫った作品でした。面白かったです。

 

以下ネタバレです。

 

ジャックが追っていた黒幕の技師の正体は制御機能が組み込まれていない初期型のロボットだったのです。そしてそのロボットに制御機能を作らせたのです。人類の知能をはるかに超えたロボットが作ったプロトコルだから人類が変更することが出来ないのです。

制御機能が組み込まれていなかった初期型ロボットはどんどん知能を高め、人類はロボットの言っていることが理解できなくなってしまった。それで管理不能となり抹消することにしたという訳です。制御機能に「人間のプライドを傷付けてはいけない」というのを追加しないといけないですね。

予告動画

youtu.be

JustWatch

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